「……見合い写真渡された」
めちゃくちゃ口をとがらせて告げ口をすると、男性――也寸之(やすゆき)は納得したような顔をした。
「見合い? あー、まあそうか」
「なにが」
なにがまあそうか、なのか。
「将仁(まさひと)は奥方と小学生の頃から付き合ってたから、そういう話が今までないお前さんが心配なんだろう」
「父さんのせいかよ! っつーか小学生で付き合うってなに!? そんで結婚まですんの!?」
「将仁が一途なのはお前がよくわかっているだろう」
「……だけどさー……」
父、将仁は妻を一途に愛している。それはそれは、息子の目から見てもうざいくらいに。
「……あの調子を小学生からやってたの……?」
和仁、両手で顔を覆ってうなだれた。恥ずかしかった。
「で? それだけじゃなさそうだな?」
「……也寸之(やすゆき)さんって結婚してないじゃん?」
「まあな」
「彼女いたことは?」
「あるけど……」
「いつ? 学生んとき? 今も?」
「……」
「教えて先輩! こういう話頼れるの也寸之さんしかいないんだよ~」
「はあ……何があったか知んねえが、俺が仕事にかまけてたらふられたんだよ」
「こんなイケオジの也寸之さんをふるの!?」
「学生んときはおっさんじゃねえんだよ。大学んくらいのときの話だ」
「あー、でもそっかー、仕事でかー……」
「うちは割とお前んとこ――本家に近いし、将仁と同級ってのもあって、何かと駆り出されてたからな。そのあおり」
「うわー、ごめんなさいしまくるしかないじゃん」
「いや。んでなくても、俺は結婚とかしてねえと思うよ」