ごにょごにょと言い訳をする祖父。
和仁の父はあくまで『次期当主』なのだが、現当主の祖父よりも人望を集め、動かせる人も多い。
父は祓魔師としての才能と、人を惹きつけるカリスマ性がありすぎた。
その結果、当主をしのぐようになってしまった。
かといって本来は温厚な性格の父なので、祖父を侮りもしないし、和仁には味方してくれることも多い。
決して甘やかしはしないが。
和仁の目指す当主像は、父。
……そう思うたび敗北感にさいなまれるが。
「そんで? いつ連れてくるんだ」
「あ? 誰を」
いつの間にか祖父が復活していた。閉じた扇で手を叩く。
「お前が彼女いるとか言ったんだろう。司家ほどじゃないが、うちもそれなりに心構えしてもらわなきゃならないんだ。早い方がいいだろう」
「だから何がだよ。心構え?」
祖父の言いたいことがわからず斜(はす)に返すと、祖父は呆れた顔をした。
「嫁に入る心構えだろう、バカモノ」
心底呆れた目をされた。こめ? ……よめ?
「………―――なに言ってんだクソジジイ!」
真っ赤になった和仁は怒鳴って祖父の部屋を出た。
祖父ははあとため息をつく。
「……将仁(まさひと)のときが、ときだったからなあ……」
「――クソジジイっ!」
和仁は自分の部屋――ではなく、修練場(しゅうれんじょう)として敷地の奥にある道場に駆けこんだ。
「おう? 若、どうした」
修練場は武器庫を併設していて、その手入れをしていた壮年の男性が和仁に声をかけた。
武器庫の隅で膝を抱えて小さくなった和仁の近くにドカッと座る。
「ジジイが今日もクソだった」
「ひどすぎるタイトルだな。今日は何あった」