「え、なにこれ」

ずいっと渡された薄い冊子のようなものを手にして、和仁は首を傾げた。

祖父は今日も、なんでもないふうに答える。

「見合い写真」

(………?)

「誰か見合いすんの?」

「お前」
 
その言葉の意味を噛み砕くのに、和仁は五秒ほど時間を要した。

「……………は?」

和仁、祖父を前にすると定番の据わった目になる。

「天瀬を背負っていく覚悟があるのなら、伴侶(はんりょ)は早めに決めて置け」

「ふ……ざけんなよくそじじい!」

いきり立ち上がるも祖父は意に介さない。はんと鼻で笑う。

「何を言うか。十六にもなって恋仲のひとりもおらんとは」

「二人以上いたら問題だよくそじじい」

言い返すが、祖父は和仁を見もしない。

「お前がぼんやりしとるからだ。政略させられたくなかったら自分で見つけてこい」

さすがにカチンときた。そんな理由で付き合うなんて相手に対して非道すぎる。

「見つけてるし。もういるし」

そう返すと祖父は、やっと和仁を見た。意外そうな顔で。

「ほお? まじか」

まじまじと和仁を見てくるので、和仁はやっと座った。

「い・る・の。彼女。つーか俺の結婚相手に口出しするならまた一族会議開くぞ――て父さんが言ってた」

その返しには、うっと息を詰まらせる祖父。そして急に哀愁をただよわせる。

「……あれはなんで当主のわしより権限持ってるんだ……?」

「父さんの実力だろ」

「……まあそうなんだが……」