アラングレンの襲撃から三日後。
アラングレンの身柄は国際機関へと移送され、先の戦闘で負傷したノルンとクリムヒルデも、ウルスラの回復薬のおかげですっかり回復している。フェンサリル領内は再び、平穏な日常を取り戻しつつあった。
「よし、本日の訓練はここまで!」
修練場にて、クリムヒルデの言葉を受けて本日の訓練メニューは終了。自警団の新兵達が続々と家路へついていく。
「お疲れさん、リム」
「おお、グラム殿」
この日、グラムはウルスラの付き添いのもと、先のアラングレン襲撃に関して国際機関の捜査官から、事実関係の確認のためのに事情聴取を受けていたのだが、それもようやく一段落ついた。
「今晩暇なら、うちにご飯を食べに来ないか。ノルンの奴、しばらく料理が出来なかった反動で今日はたくさん作ると張り切っていてな。せっかくだから皆も誘おうかと思って」
「相変わらずノルン殿はユニークのお方だな。もちろん私も参加させて頂く。身支度を整えたら向かうよ」
「それじゃあまた後で」
簡潔に要件だけを告げるとグラムは修練場を後にした。
その足で次は、図書館にいるであろうレンカの元へと向かう。
「是非とも参加させて頂きます。ノルンさんのお料理はどれも大変美味しいですからね。勉強し甲斐があります」
図書館の勉強机の上には魔導書の他にも、挿絵付きの料理本もいくつか並べられていた。真面目なレンカのことだから、魔導の勉強はしっかりこなした上で趣味の本にも手を出しているのだとは思う。たぶん。
「リムさんと合流して、後でお伺いしますね」
「食べ過ぎてお腹壊すなよ」
苦笑顔でそう言い残すと、グラムはそのまま家路についた。
「お帰りなさい、グラム様」
「お帰りなさいです、グラムさん」
料理の下ごしらえをするノルンとその補助をするシグリが、キッチンから玄関の方へ向けて顔を覗かせた。
「リムとレンカは後で合流する。ウルスラは忙しいみたいでな、残念ながら今回は不参加だ」
「承知しました。グラム様はしばらくお休みになっていください」
「俺も何か手伝おうか?」
「グラム様は力仕事以外はてんで駄目なんですから、余計な仕事を増やさないように大人しくしてください」
「うちのメイドさんは手厳しいね」
苦笑顔で肩を竦めると、グラムは大人しくベランダのウッドチェアへと腰を下ろした。気分転換に大きく伸びをしようとした瞬間・
『誰か助けて……』
「呼ばれたからには、力にならないわけにはいかないな」
頭の中で声がすると同時にグラムは、準備運動に肩を回しながらウッドチェアから立ち上がった。
「ノルン、悪いが少し出てくる。いつでも迎えに来れるように準備だけしておいてくれ」
「遅くなってもいいように、残り物でお夜食ご用意しておきますね」
グラムがユニークスキルによって、突然別の場所へワープしてしまうことにも、お互いにすっかり慣れたものだ。すでに日常の一部になっている。
当たり前のように、グラムの姿は自宅のベランダから消失し、ノルンはその光景を手を振りながら見送った。
窮地に陥った時、突然屈強な赤毛の青年が現れたならもう安心だ。
時にはパンイチの変態扱いをうけるかもしれない。時には覗きの疑いをかけられるかもしれない。時にはネギを担いた頼りない姿で現れるかもしれない。だけど安心してほしい。そう見えても彼は、かつての氷結戦争で活躍した勇者の一人なのだから。
彼が来たからには、大概のことはもう大丈夫。
隠居した大戦の勇者、ワープスキルで救世主となる 了
アラングレンの身柄は国際機関へと移送され、先の戦闘で負傷したノルンとクリムヒルデも、ウルスラの回復薬のおかげですっかり回復している。フェンサリル領内は再び、平穏な日常を取り戻しつつあった。
「よし、本日の訓練はここまで!」
修練場にて、クリムヒルデの言葉を受けて本日の訓練メニューは終了。自警団の新兵達が続々と家路へついていく。
「お疲れさん、リム」
「おお、グラム殿」
この日、グラムはウルスラの付き添いのもと、先のアラングレン襲撃に関して国際機関の捜査官から、事実関係の確認のためのに事情聴取を受けていたのだが、それもようやく一段落ついた。
「今晩暇なら、うちにご飯を食べに来ないか。ノルンの奴、しばらく料理が出来なかった反動で今日はたくさん作ると張り切っていてな。せっかくだから皆も誘おうかと思って」
「相変わらずノルン殿はユニークのお方だな。もちろん私も参加させて頂く。身支度を整えたら向かうよ」
「それじゃあまた後で」
簡潔に要件だけを告げるとグラムは修練場を後にした。
その足で次は、図書館にいるであろうレンカの元へと向かう。
「是非とも参加させて頂きます。ノルンさんのお料理はどれも大変美味しいですからね。勉強し甲斐があります」
図書館の勉強机の上には魔導書の他にも、挿絵付きの料理本もいくつか並べられていた。真面目なレンカのことだから、魔導の勉強はしっかりこなした上で趣味の本にも手を出しているのだとは思う。たぶん。
「リムさんと合流して、後でお伺いしますね」
「食べ過ぎてお腹壊すなよ」
苦笑顔でそう言い残すと、グラムはそのまま家路についた。
「お帰りなさい、グラム様」
「お帰りなさいです、グラムさん」
料理の下ごしらえをするノルンとその補助をするシグリが、キッチンから玄関の方へ向けて顔を覗かせた。
「リムとレンカは後で合流する。ウルスラは忙しいみたいでな、残念ながら今回は不参加だ」
「承知しました。グラム様はしばらくお休みになっていください」
「俺も何か手伝おうか?」
「グラム様は力仕事以外はてんで駄目なんですから、余計な仕事を増やさないように大人しくしてください」
「うちのメイドさんは手厳しいね」
苦笑顔で肩を竦めると、グラムは大人しくベランダのウッドチェアへと腰を下ろした。気分転換に大きく伸びをしようとした瞬間・
『誰か助けて……』
「呼ばれたからには、力にならないわけにはいかないな」
頭の中で声がすると同時にグラムは、準備運動に肩を回しながらウッドチェアから立ち上がった。
「ノルン、悪いが少し出てくる。いつでも迎えに来れるように準備だけしておいてくれ」
「遅くなってもいいように、残り物でお夜食ご用意しておきますね」
グラムがユニークスキルによって、突然別の場所へワープしてしまうことにも、お互いにすっかり慣れたものだ。すでに日常の一部になっている。
当たり前のように、グラムの姿は自宅のベランダから消失し、ノルンはその光景を手を振りながら見送った。
窮地に陥った時、突然屈強な赤毛の青年が現れたならもう安心だ。
時にはパンイチの変態扱いをうけるかもしれない。時には覗きの疑いをかけられるかもしれない。時にはネギを担いた頼りない姿で現れるかもしれない。だけど安心してほしい。そう見えても彼は、かつての氷結戦争で活躍した勇者の一人なのだから。
彼が来たからには、大概のことはもう大丈夫。
隠居した大戦の勇者、ワープスキルで救世主となる 了