「貴様ら、一体どこから!」
「何も知らずに警備していたとは、愚かな」
クリムヒルデ率いる解放部隊は、地下通路を利用しエックハルト邸への侵入を果たした。先陣を切るクリムヒルデが、警備にあたっていた二人のならず者を、長剣で一瞬で切り伏せる。
100年程前、フォールクヴァング領では大規模は内乱が発生し、貴族の屋敷には脱出用の地下通路が整備されているのが基本だった。現在は使われていないものの、エックハルト邸にも、最寄りの教会まで繋がる地下通路が当時のまま残されている。今回は逆にそれを侵入に利用した形だ。
当然、ユルゲン側も地下からの侵入経路については把握していたようだが、突如正門を突破してきたグラムに対処すべく、地下通路の出入り口の警備に当たっていた騎士も正門に投入せざる負えない状況になってしまっていた。結果、地下通路の出入り口を警備するのは屋敷の内情に詳しくない、部外者である数名のならず者達だけ。つけ入る隙は大きく、侵入は容易であった。
「どけ、貴様らに用はない!」
余計な戦闘をしている時間を惜しみ、クリムヒルデは刺突の構えを取り、自身の得意技でもある剣術系スキル「剣衝突貫」を発動。凄まじい衝撃波を纏った刺突で一瞬で駆け抜け、ならず者たちを次々となぎ倒していく。大ダメージを受けたならず者たちはことごとく戦闘不能に陥り、地下通路出入り口の警備は一瞬で壊滅した。
「先ずは牢に囚われている仲間達を救出する」
「了解」
念のため地下通路の出入り口に二人の騎士を残すと、クリムヒルデはオスカルらを伴い、騎士団長や副団長らが囚われている地下牢を目指した。
「ご無事ですか、マリウス殿!」
「リム、クリムヒルデか。良かった、君の処刑が行われると耳にし心配していたんだ」
クリムヒルデは50名以上を収容出来るエックハルト家の地下牢の前へと到着。牢越しに、エックハルト騎士団の副団長である赤毛の青年騎士、マリウスとの再会を果たした。
囚われの騎士達に精神的な追い打ちをかける意味合いで、本日クリムヒルデの処刑が行われることは、牢獄にも大々的に伝えられていたのが、クリムヒルデは仲間の救出という、これ以上ない形で健在ぶりを知らしめた。意気消沈していた囚われの騎士達の志気も、自然と高まってくる。
「オスカル、牢獄の開錠を」
「お任せあれ」
グラムが暴れた影響だろうか。牢の見張り番も鍵ごと不在であったが、開錠系のスキルを有するオスカルが居たおかげで、騎士達の解放には支障は無かった。オスカルもまた伯父であるマックスの教えに従い、戦闘系だけではなく補助系のスキルも積極的に取得。その経験が大いに役立った。
手際よく開錠が成され、30名の騎士達が牢獄から解放された。
しかしその中に、この場にいるべき人物の姿が足りない。
「マリウス殿。ローレンス団長の姿が見えぬが?」
「団長殿は、屋敷に混乱が起こって直ぐに、ユルゲンに連れていかれた。団長の計略と疑い、尋問する気なのやもしれぬ」
「おのれ、ユルゲン」
怒りに声を震わせ、クリムヒルデが左の拳を強く握った。
「ローレンス団長やトマス様が心配だ。私はユルゲンを追う」
「しかし、屋敷内にはまだ相当数ユルゲン配下の兵がいるはずだ。そう簡単にユルゲンの下まで辿り着けるかどうか」
「屋敷内の敵対勢力でしたら、我らの協力者のおかげで間もなく壊滅することでしょう」
マリウス副団長の不安は杞憂であると、クリムヒルデは自信満々に言い切った。ユルゲンの配下ではグラムには敵いっこない。正門付近の戦闘音はすでに静まってきている。正門での戦闘は間もなく終了すると見て問題無いだろう。
「オスカル、貴殿らは現状を把握するためにも、一度グラム殿に合流してくれ」
「了解だよ、リム」
グラムとの連絡役には、思わぬ接点のあったオスカルが最適だ。
頷くオスカルはすぐさま行動、仲間の騎士4名と共に地上階へと駆け上がっていった。
「私もリムと共にユルゲンを追う。詳しい経緯は移動がてら聞くことにする。負傷者は地下通路を利用し、一度屋敷を離脱しろ。戦える者は武器庫で武器を確保した後、エックハルト邸の奪還を目指せ」
「了解しました!」
マリウス副団長の指示を受け、解放された騎士達も次々と行動を開始していく。
「参りましょう、マリウス殿」
仇敵との対峙を前に、クリムヒルデは神妙な面持ちで上階へと駆け上がっていった。
「何も知らずに警備していたとは、愚かな」
クリムヒルデ率いる解放部隊は、地下通路を利用しエックハルト邸への侵入を果たした。先陣を切るクリムヒルデが、警備にあたっていた二人のならず者を、長剣で一瞬で切り伏せる。
100年程前、フォールクヴァング領では大規模は内乱が発生し、貴族の屋敷には脱出用の地下通路が整備されているのが基本だった。現在は使われていないものの、エックハルト邸にも、最寄りの教会まで繋がる地下通路が当時のまま残されている。今回は逆にそれを侵入に利用した形だ。
当然、ユルゲン側も地下からの侵入経路については把握していたようだが、突如正門を突破してきたグラムに対処すべく、地下通路の出入り口の警備に当たっていた騎士も正門に投入せざる負えない状況になってしまっていた。結果、地下通路の出入り口を警備するのは屋敷の内情に詳しくない、部外者である数名のならず者達だけ。つけ入る隙は大きく、侵入は容易であった。
「どけ、貴様らに用はない!」
余計な戦闘をしている時間を惜しみ、クリムヒルデは刺突の構えを取り、自身の得意技でもある剣術系スキル「剣衝突貫」を発動。凄まじい衝撃波を纏った刺突で一瞬で駆け抜け、ならず者たちを次々となぎ倒していく。大ダメージを受けたならず者たちはことごとく戦闘不能に陥り、地下通路出入り口の警備は一瞬で壊滅した。
「先ずは牢に囚われている仲間達を救出する」
「了解」
念のため地下通路の出入り口に二人の騎士を残すと、クリムヒルデはオスカルらを伴い、騎士団長や副団長らが囚われている地下牢を目指した。
「ご無事ですか、マリウス殿!」
「リム、クリムヒルデか。良かった、君の処刑が行われると耳にし心配していたんだ」
クリムヒルデは50名以上を収容出来るエックハルト家の地下牢の前へと到着。牢越しに、エックハルト騎士団の副団長である赤毛の青年騎士、マリウスとの再会を果たした。
囚われの騎士達に精神的な追い打ちをかける意味合いで、本日クリムヒルデの処刑が行われることは、牢獄にも大々的に伝えられていたのが、クリムヒルデは仲間の救出という、これ以上ない形で健在ぶりを知らしめた。意気消沈していた囚われの騎士達の志気も、自然と高まってくる。
「オスカル、牢獄の開錠を」
「お任せあれ」
グラムが暴れた影響だろうか。牢の見張り番も鍵ごと不在であったが、開錠系のスキルを有するオスカルが居たおかげで、騎士達の解放には支障は無かった。オスカルもまた伯父であるマックスの教えに従い、戦闘系だけではなく補助系のスキルも積極的に取得。その経験が大いに役立った。
手際よく開錠が成され、30名の騎士達が牢獄から解放された。
しかしその中に、この場にいるべき人物の姿が足りない。
「マリウス殿。ローレンス団長の姿が見えぬが?」
「団長殿は、屋敷に混乱が起こって直ぐに、ユルゲンに連れていかれた。団長の計略と疑い、尋問する気なのやもしれぬ」
「おのれ、ユルゲン」
怒りに声を震わせ、クリムヒルデが左の拳を強く握った。
「ローレンス団長やトマス様が心配だ。私はユルゲンを追う」
「しかし、屋敷内にはまだ相当数ユルゲン配下の兵がいるはずだ。そう簡単にユルゲンの下まで辿り着けるかどうか」
「屋敷内の敵対勢力でしたら、我らの協力者のおかげで間もなく壊滅することでしょう」
マリウス副団長の不安は杞憂であると、クリムヒルデは自信満々に言い切った。ユルゲンの配下ではグラムには敵いっこない。正門付近の戦闘音はすでに静まってきている。正門での戦闘は間もなく終了すると見て問題無いだろう。
「オスカル、貴殿らは現状を把握するためにも、一度グラム殿に合流してくれ」
「了解だよ、リム」
グラムとの連絡役には、思わぬ接点のあったオスカルが最適だ。
頷くオスカルはすぐさま行動、仲間の騎士4名と共に地上階へと駆け上がっていった。
「私もリムと共にユルゲンを追う。詳しい経緯は移動がてら聞くことにする。負傷者は地下通路を利用し、一度屋敷を離脱しろ。戦える者は武器庫で武器を確保した後、エックハルト邸の奪還を目指せ」
「了解しました!」
マリウス副団長の指示を受け、解放された騎士達も次々と行動を開始していく。
「参りましょう、マリウス殿」
仇敵との対峙を前に、クリムヒルデは神妙な面持ちで上階へと駆け上がっていった。