かつて、氷結戦争と呼ばれる大戦があった。
氷に閉ざされた地下世界、ニブルアースの女帝フィンブル率いる氷魔軍が、人型種族の楽園、ミルドアースへの侵攻を開始したのである。
高レベルの氷塊巨人を中心とした氷魔軍の戦闘能力は圧倒的で、ミルドアースの大地を次々と侵略。氷魔軍に支配された地域は、人型種族では住むことの叶わぬ氷の世界へと姿を変えていった。
生存領域の減少により、ミルドアースは存亡の危機へと立たされていたが、後に英雄や勇者と呼ばれることとなる者達の活躍により、戦況は徐々に覆されていく。
奇しくも、氷魔軍の侵攻というかつてない危機が、秘められた人型種族の可能性を覚醒させる要因となったのだ。
その当時、人型種族の戦闘能力到達限界はレベル50であると考えられていたが、氷魔軍の強力な魔物との戦いを繰り返し、多量の経験値を得ることで、レベル50を超える猛者たちが現れはじめた。
高みを越えた者達を人々は勇者と呼び慕い、レベル上昇によって、より強力なスキルを得た勇者たちは氷魔軍への反撃を開始。
中でも特定の個人にしか発現しない強力なユニークスキルを有する者達の活躍は凄まじく、勇者たちは強力な氷魔軍の魔物たちを次々と撃破、レベルをさらに向上させていった。そして戦争中期、一人の勇者がついにレベル90の大台を突破し、人類未踏の境地「英雄」の称号を手に入れた。その後も9名の勇者が「英雄」へと昇格、最終的にはミルドアース軍に10人の「英雄」が誕生した。
元より規格外だったその者たちの戦闘能力は、「英雄」となったことでより高位の物へと進化。人の身では撃破不可能と考えられていた、屈強な氷塊巨人をも易々と撃破する程の戦闘能力を発揮した。
戦争末期。10人の英雄達は781人の勇者を率い、フィンブル率いる氷魔軍との最終決戦へと臨む。後にフィンブルの冬と呼ばれた激戦は、多くの犠牲を払いながらもミルドアース軍が氷魔軍へと勝利。フィンブルをニブルアースの地下深くへと追放し、氷魔軍をミルドアースから排除することに成功した。
しかし、勝利には大きな犠牲が伴った。
最終決戦にて、3人の英雄と519人の勇者の命が失われたのだ。
再びミルドアースに平和が訪れた。氷結戦争の勝利に貢献した7人の英雄達は生ける伝説として語り継がれ、それぞれが望みの報酬を受け取ることとなった。
土地を貰い受け、新たに領を興した者。戦前と変わらず、主君への忠誠を貫き通す者。魔導の探求のために僻地へと籠った者。一切の消息が不明の者。英雄達のその後は様々だ。
英雄達の輝かしい功績が語り継がれる一方で、戦力の中核を担い、多くの犠牲を払いながらも勝利へと貢献した勇者たちについて語られる機会はあまり多くはない。個人での凄まじい戦績を誇る英雄達は異なり、勇者たちの活躍は個人ではなく集団として捉えられる傾向にある。人々は勇者部隊の活躍を知っていても、その一人一人までは詳細に知り得ていないのだ。
しかし、忘れてはいけない。勇者を名乗る資格を有するのはレベル50以上の強者のみ。7人の英雄には及ばないとはいえ、その戦闘能力は間違いなく世界最強クラスである。
生き残った262名の勇者たちのその後についても様々だが、動向が把握されていない者も少なくない。道端で出会った平凡な青年がその実、一線を退いた人類最強クラスの勇者であってもおかしくはないのである。
氷結戦争終結から5年目の春。
新興の領、フェンサリルの農村部にも、氷結戦争の最前線で活躍した勇者級の青年が暮らしている。
青年の名はグラム。英雄達に準ずるステータスを持ちながらも、ユニークスキルを持たぬが故、さらなる高みへは至らなかった、最も英雄に近い勇者と評された青年である。
この物語は、そんな彼にユニークスキルが芽生えた瞬間から始まる。
氷魔軍の脅威は去り、世界はすでに平穏を取り戻している。
果たして彼は、今更芽生えたユニークスキルとどのように向き合っていくのであろうか?
氷に閉ざされた地下世界、ニブルアースの女帝フィンブル率いる氷魔軍が、人型種族の楽園、ミルドアースへの侵攻を開始したのである。
高レベルの氷塊巨人を中心とした氷魔軍の戦闘能力は圧倒的で、ミルドアースの大地を次々と侵略。氷魔軍に支配された地域は、人型種族では住むことの叶わぬ氷の世界へと姿を変えていった。
生存領域の減少により、ミルドアースは存亡の危機へと立たされていたが、後に英雄や勇者と呼ばれることとなる者達の活躍により、戦況は徐々に覆されていく。
奇しくも、氷魔軍の侵攻というかつてない危機が、秘められた人型種族の可能性を覚醒させる要因となったのだ。
その当時、人型種族の戦闘能力到達限界はレベル50であると考えられていたが、氷魔軍の強力な魔物との戦いを繰り返し、多量の経験値を得ることで、レベル50を超える猛者たちが現れはじめた。
高みを越えた者達を人々は勇者と呼び慕い、レベル上昇によって、より強力なスキルを得た勇者たちは氷魔軍への反撃を開始。
中でも特定の個人にしか発現しない強力なユニークスキルを有する者達の活躍は凄まじく、勇者たちは強力な氷魔軍の魔物たちを次々と撃破、レベルをさらに向上させていった。そして戦争中期、一人の勇者がついにレベル90の大台を突破し、人類未踏の境地「英雄」の称号を手に入れた。その後も9名の勇者が「英雄」へと昇格、最終的にはミルドアース軍に10人の「英雄」が誕生した。
元より規格外だったその者たちの戦闘能力は、「英雄」となったことでより高位の物へと進化。人の身では撃破不可能と考えられていた、屈強な氷塊巨人をも易々と撃破する程の戦闘能力を発揮した。
戦争末期。10人の英雄達は781人の勇者を率い、フィンブル率いる氷魔軍との最終決戦へと臨む。後にフィンブルの冬と呼ばれた激戦は、多くの犠牲を払いながらもミルドアース軍が氷魔軍へと勝利。フィンブルをニブルアースの地下深くへと追放し、氷魔軍をミルドアースから排除することに成功した。
しかし、勝利には大きな犠牲が伴った。
最終決戦にて、3人の英雄と519人の勇者の命が失われたのだ。
再びミルドアースに平和が訪れた。氷結戦争の勝利に貢献した7人の英雄達は生ける伝説として語り継がれ、それぞれが望みの報酬を受け取ることとなった。
土地を貰い受け、新たに領を興した者。戦前と変わらず、主君への忠誠を貫き通す者。魔導の探求のために僻地へと籠った者。一切の消息が不明の者。英雄達のその後は様々だ。
英雄達の輝かしい功績が語り継がれる一方で、戦力の中核を担い、多くの犠牲を払いながらも勝利へと貢献した勇者たちについて語られる機会はあまり多くはない。個人での凄まじい戦績を誇る英雄達は異なり、勇者たちの活躍は個人ではなく集団として捉えられる傾向にある。人々は勇者部隊の活躍を知っていても、その一人一人までは詳細に知り得ていないのだ。
しかし、忘れてはいけない。勇者を名乗る資格を有するのはレベル50以上の強者のみ。7人の英雄には及ばないとはいえ、その戦闘能力は間違いなく世界最強クラスである。
生き残った262名の勇者たちのその後についても様々だが、動向が把握されていない者も少なくない。道端で出会った平凡な青年がその実、一線を退いた人類最強クラスの勇者であってもおかしくはないのである。
氷結戦争終結から5年目の春。
新興の領、フェンサリルの農村部にも、氷結戦争の最前線で活躍した勇者級の青年が暮らしている。
青年の名はグラム。英雄達に準ずるステータスを持ちながらも、ユニークスキルを持たぬが故、さらなる高みへは至らなかった、最も英雄に近い勇者と評された青年である。
この物語は、そんな彼にユニークスキルが芽生えた瞬間から始まる。
氷魔軍の脅威は去り、世界はすでに平穏を取り戻している。
果たして彼は、今更芽生えたユニークスキルとどのように向き合っていくのであろうか?