「何の音だ!! 」
半壊したドア……いやこれもうドアじゃないな。
大の大人1人が余裕で通れる穴が空いてしまっている。 ドアだったものをくぐってまたひとがやってくる。
ぞろぞろと5~6人やってきて、声を発したであろう中年の人物を護衛するように立ちはばかる。
この人達は誰だ?やっぱり今の音を聞いて駆け付けてきたのか。
第三者が見るとユナに抱きついたまま人を殴り飛ばしたやばい奴にしか見えない訳でーーー
「貴様ぁっ!!!……ワシの娘に手を出した上に更には弟を手にかけるとは……死罪じゃすまされないと思え!」
当然、勘違いされた。
「ユナに手なんか出してないですし、弟さんはあちらから殴ってきたから受け止めただけです!!あと死んでませんから!!? 」
「ええい!まだ抱きついてるくせにどの口が言うか!!お前ら!こやつを捕らえろ!!! 」
護衛の者たちが捕らえようと迫ってくるーー!
下手になにか行動したらキザ男と同様、全員気絶させてしまうかもしれない。よって被害を最小限に抑えるにはーーー
「《召喚魔法》! 」
地面に紫色の魔法陣が現れ、瘴気を周囲に解放しだす。 通常の召喚魔法であれば瘴気など一切出るはずもなく魔法陣も赤色や青色が殆どだ。
目の前にいる男達はその事を知っているため妨害しようと試みるが召喚魔法を使ったことはおろか見たことすら無いのでこの重大性を知らなかったーーー。
「すげぇ!かっこいい!!どんな魔物が召喚されるんだろう!! 」
テンションが爆上がりであった。 そして瘴気が収まり魔法陣から現れたのはーー!
「妾を呼んだのは誰じゃ?人間に呼び出されるとは何千年ぶりかも忘れたが……」
紫の髪を背中まで伸ばした少女であった。
片方の目は黄色く光り、この場に居る人間や僕を《鑑定》して、品定めしているような感覚に陥る。
そしてこちらを見てくる。 まるでメデューサに見られたように動けなくなる。
数秒ーー数十秒たっただろうか?
少女が驚いたように顔を上げると……
「お主化け物か何かか!?なんじゃステータスオール0って!!それだけ見ると雑魚の極みだがその後が問題じゃ!! 」
興奮してるのか顔を赤らめながらそうまくし立ててくる。
「何か問題があるのか? 」
化け物って言われたのは少し傷ついたが確かにある意味化け物だからな、仕方ない。
「お主のスキルじゃ!!なんなのじゃ《クリエイティブモード》って……何千年も生きておったが見た事も聞いたこともないぞ」
「いやそれが自分でもよく分からないんです……ところで貴方は誰なんです? 」
「な!?知らずに呼び出したのか!?本当になにものなんだお主……まぁ、いい。妾は貴様ら人間の呼び方で言うとバハムートじゃ」
バハムートか。そうかそうか。……ん?バハムート??バハムートってあれか?SSS級に指定されていて漆黒と紫の翼を持ち、巨大な爪は全てを切り裂く。魔法も多種多様に使えその全てが《極大魔法》を超える威力持っている。
殺戮を繰り返していったため『殺戮の紫竜』とも呼ばれ、世界を滅ぼしかねないと数千年前、勇者に封印されそれ以来姿を見せていない。
現在では【伝説の古竜】と呼ばれることも多い。
書物にもなっており誰でも知っている。 もし目の前にいるこの少女が本当にバハムートだとしたら……世界を滅ぼしかけた『殺戮の紫竜』の封印を解き、この世に召喚した事になる。
即刻死刑だろう。 ……いや、まだこの少女がバハムートと決まった訳では無い。
大体バハムートは家一軒と同等くらいの巨体で、黒と紫の翼があり、全てを貫く爪があるはずだ。 目の前の少女は人族の少女となんら変わりもない。
かなりの美少女枠に入る可愛さだが……。
「ふむ……信じられないと言うならそやつらを殺せばええかえ?」
可愛い顔でとんでもないことを言ってきたぞ!?
「殺さなくていいから!? 」
「むぅ……じゃあどうやって証明せいと言うのじゃ」
「じゃあバハムートさんの魔法見せてください」
「そやつらに打ち込めばええかえ? 」
「いや外でお願いします!? 」
バハムートさん戦闘狂か何かなの??!
「じゃあ外に打つとしようかえ……」
バハムートさんはそう言うと背後に魔法陣が複数現れる。
戦の前の静けさと言ったとこだろうか……部屋に入ってきた人達もごくりと唾を飲んで佇んでいる。
「《極大・毒炎 》、《極大・紫竜ノ伊吹》、《極大・灼熱爆》」
ずおおおおおおおん……!!
魔法陣が妖しく光った瞬間、極大魔法の嵐が空中に放たれこの世の終わりとも思えるような爆音が鳴り響く。
バハムートの配慮だったのだろうか。空に放ったため街に被害は無い。
だが、これが街に放たれていたら……。街どころか国が滅んでいただろう。
そんな僕を気にせずバハムートは舌を出しながらこんな事を言ってくる 。
「すまぬ。封印が解けて幾分経ってなく本来の半分も行かぬ中途半端な魔法になってしまった……これでは信じてくれぬか? 」
1つの国を滅ぼしかねないあの威力で本来の半分も行っていない……だと?
………………。
…………。
……。
「いや十分です!!バハムートさんが本物って分かりましたから!!」
「そうか。それなら良かったのじゃ!ところでどうして妾の封印を解いたのじゃ?ほれ、人間には妾は嫌われておるはずじゃが……」
顔を伏せながらそう言ってくる。 悲しそうに見えたのは気のせいか。
「自分では封印を解いたつもりは無いんだが……《召喚魔法》を使ったらバハムートさんが召喚されたので……」
「妾を召喚したのも凄いが無意識にあの妾の本気でもびくともしなかった封印の鎖を解くとは……お主には恩があるし……妾が出来ることは少ないしのぉ……」
そこまで言ってチラッと、隣でさっきからずっと僕の腕に胸を押し付けているユナを見る。
そぉじゃ!と手と手をポンと合わせると僕に顔を向ける。
「お主の嫁になってやる!これでどうじゃ!! 」
そうか、嫁か……。 うんうん。 うん。 うん……?
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?
なんかとんでもないこと言い出した!?
ハズレスキルだと思われた《クリエイティブモード》はバハムートすらも召喚できる最強のスキルだったようだ。
僕のクリエイティブライブは波乱の幕開けに過ぎないみたいだ……!