やっと取り調べが終わって、帰り道。
お互い無言のまま歩いていた。

ヒナは下を向いており、チラッとこっちを見てくるので僕も目合わせると、ふいっとそらされてしまう。

かといって振り向かずにいると、ずっと凝視される。

気にしないようにして前を向いて歩いてるんだけど、今もずっとこっちを見てきてる。

ちら。

あ、また速攻そらされた。もう気になってしょうがないし、意を決して聞いてみることに。

「ええと、な、なにかな......? 」

「ふぇ......!? あ、え、なんでもな......いや、なんでもないことは無いんだけど。ちょっと言いにくいのよ」

言いにくいこと、か。
まあ、誰だって言いずらいことや、言いたくないことはあるだろう。

「無理に言わなくていいよ? 」

「それはそれでモヤモヤするってゆーか。やっぱ聞く」

んん、と咳払いをして意を決したように聞いてくる。

「あーしの事、どう思ってる......? 」

そう言い切ると同時に顔が紅く染め上がる。
もじもじと身体をくねらせ、人差し指同士をつきあわせている。

背中の夕焼けも相まって、凄くいい雰囲気。

ヒナをどう思っている、か。
正直なんで僕に突っかかってきたのか分からないけど、それが縁となって昨日この街を案内してくれた。
少しは仲良くなれたんじゃないだろうか。

最初は失礼な態度とっちゃったけど、それを一切気にすることなく気さくに接してくれるし。

「初めてできたなんでも許せる友達ーーーかな」

僕としてもかなり緊張した。思いを伝えるのってここまで緊張するんだな。
皆もこうやって緊張しながらも伝えてくれてたのかと、嬉しくなる。

「そ、そうよね。友達よね......。会ってからまだ数日しか経ってないもんね。けどさ、あーしからしたらピンチに颯爽と駆けつけて、助けてくれたヒーローなんだよ......。こんなの絶対惚れちゃうよ。最初会った時には女沢山連れてて絶対ありえないって思ってたのに、一日でこんなに変わっちゃうなんて」

そこまで言って、はっとする。

「あんたまさか今の聞こえた? 」

「え? そうよね友達よね。までしか聞こえなかったよ。後半声小さくて、ぶつぶつとしか聞き取れなかった。ごめん、もしかして大切なこと言ってた? 」

「よかったぁぁ......。たいしたことなんも言ってないから、まーじ気にしないで」

「わかった」

そんな風に話していると、ヒナが泊まっているという宿に着いた。

やはりというべきか、普通に僕たちが泊まっている宿屋街の中の宿だった。
あの時なんで逆方向に走っていったのか聞いてみると、予想外の解答が返ってきた。

「あんたが見せつけるようにして女とイチャつくから、それに腹が立って、それに満更でもない顔してるのをみて、なんかモヤッとしたし、それを見たくないから振り切るようにして逃げたのよ。走ってる間も頭からそれが抜けなくて、その事考えてて......気がついたらあそこの近くにいて、それでさらわれたってわーけ」

真相を聞いた僕はというと......。土下座していた。

それもダイナミックに。《神速》を使って。

「はっ!? え!? ちょ、あんたこんな道のど真ん中で何してんのよ!? 皆あんた見てんわよ? 」

「いやだって完全に僕のせいじゃん......」

「そ、そうだけど!! それでもあんたはあーしを助けてくれた。それが全てなのよ。彼女とイチャつくのは当たり前の行為なんだし、それに入り込んで勝手にイラついて、嫉妬したあーしも悪いのよ......」

だからさ、と前置き。

「助けてくれたあんたがかっこよかった! だからそんなダサいまねしないで。傍から見たら命の恩人に土下座させてるクソ女にしか見えないじゃない......へ、いや現にそうじゃない!? いや、ほんと早く止めてーーーー!!!!!!! 」

そんなヒナの魂の叫びがオレンジ色に染まった夕陽の空に打ち上がったのだった。