さて今日は何をしよう。
街は昨日全て見て回ったから暇だ。
気になる場所があったんだけど、何故か誰も教えてくれなかったしはぐらされたからそこに行ってみようと思う。
せっかくだし各自昨日のヒナの説明で気になった店とかもあるだろうし自由行動にしよう。
そんな旨を説明すると、
「なんか企んでないかな? 」
「怪しいのじゃ」
「私も行ってみたいお店があったので、賛成です」
「やったー! 自由行動だー!! 」
前半なんか疑いの目をかけられた気がするが気のせいだろう、うん。
よし、自由行動開始ー!
「それじゃあ、今日は各自好きなところを回って一日中楽しんでおいで! 昼ご飯は好きに食べてね」
そう言い残して、ダッシュで走り去る。
「あ、待てー!! 」
そんな声が聞こえた気がするが気のせいだろう。
さて、どうしようか。
とりあえず追っ手(皆)に見つからないように動かなければならない。
きょろきょろと辺りを見渡してみるが、つけられている気配や見られている感覚は感じない。
まず昨日の場所に行ってみたいが、泊まっている宿屋の近くだから今行くと誰かと出くわしそうで怖いな。
「うーん」
反対方向から見て回って頃合いを見て入ってみよう。
追いかけられている事を見越して、気持ち早めに。
すたすた……。
宿屋街の反対側、昨日ヒナと別れた場所。
そういや、ヒナは無事に宿屋に着いて寝れたのかな。
歩いているがこちらの方向に宿屋は1軒も見当たらない。
昼に差し掛かっているというのに薄暗い。
ゴミとかも散乱してるし、火魔法が壁に当たり焦げた跡とかもある。
治安の悪そうな場所だ。
本当にこっちに宿屋なんてあるのだろうか。
ここの風景を見て不安に駆られた僕は急ぎ足になりながら、ヒナを探す。
こんなに空気が淀み、治安の悪そうな場所なんだ。
もしかしたら倒れてるかもしれない、襲われたかもしれない。
そんな考えが頭をよぎる。
ここにきてやっと宿屋街、繁華街以外で人を見かけた。
スキンヘッドの大男。剣をゴミ袋に突き立てており、柄が悪い。
「あの、すいません。昨日この辺りで薄茶色で頭の先だけピンク色に染めた髪を背丈まで伸ばしている女の子って見ませんでしたか」
「おう? 坊主こんなヤベー場所に何の用かと思えば人探しか。ちょいと待ってろ」
スキンヘッドの男性は寄りかかっていた家の玄関を開けて、大きい声で誰かを呼んだ。
すると、三人の男女が出てきた。
全員怖そうな見た目。
額に傷があったり、片目眼帯で左手首が包帯で包まれている。
その二人は男性だが、もう一人は女性だ。
眠そうな顔をして出てきたが、僕の顔を見るなりシャキッとした顔になった。
「なんだこのガキは。繁華街から迷ったか? 」
「……」
「あらぁ〜? ボクくん、ここは危ないのよ? デダサンザが言った通り迷っちゃったのならお姉さんが案内してあげるわよ」
僕の手を取り、その超、いや究極豊潤な胸を押し付けながら言葉通り案内してくれようとする。
「俺も最初はそう思ったんだがどうやら違うらしいんだよ、なんでも人探しだとか」
さっき言った特徴をこの三人にスキンヘッドが説明してくれた。
「あん? そんなガキがこんなとこ来るわけないと思うが」
「……見た。止めようとしたけど……声小さくて、止められなかった」
「ほんとですか!? 何処に行きました!? 」
包帯の人に詰め寄る。
「……ここからもう少し……奥まで歩いた所。だけど多分、そこの見張りにでも見つかって捕まってるはず」
捕まるって……。不穏な言葉だ。
「っ……寄りにもよってあそこかよ」
「やばい所なんですか? 」
「あぁ、あそこのボスは奴隷商人だからな。坊主の特徴を聞くに若くて美人な嬢ちゃんときた。まともな奴隷商人ではあるんだが、奴隷として娼館にでも売られるのは間違いないだろう。あいつの事だから自分や仲間が手を出してることは無いだろうが」
そ、そんな……。
最悪な結末を想像してしまい、身体がわなわなと震え、冷や汗も止まらなくなる。
助けに行かなくちゃ、早く助けないと……。
しかし身体が言うことを聞かない。
「おいイーク。てめぇ、女子供を見捨てるなっていつも言ってたよな? 何故守らなかった? 何故報告しなかった? 説明しろ」
スキンヘッドさんがイークさんに詰め寄り首ねっこを掴み、持ち上げる。
「だって……聞こえなかったし、……あの速さなら気づかれることなく駆け抜けれそうだなって……それにまだ捕まったって決まったわけじゃ……」
苦しそうにしながらイークさんが答えた。
「馬鹿野郎!!! お前だってあいつの周りの見張りの数は知ってるだろ!! ……っっもういい、お前船降りろ」
掴んでいた襟を離し、イークさんが尻もちをつく。
「坊主、その嬢ちゃんを助けたいか? 」
「もちろんです! 」
「危険を冒す覚悟はあるか? 」
「はい!! 」
「俺達が手を貸してやる。その嬢ちゃんを助けるぞ」
「い、いいんですか……!? 」
この人達に僕の頼みを聞く義理なんて無いのに。
「俺達は義賊だ。それに目の上のたんこぶだったあいつが明確な犯罪を目の前で犯してくれたんだ。こんなチャンスはもう二度とない。それに坊主と出会ったのも何かの縁だ、助けてやるさ」
「ありがとうございます……ありがとうございます!! 」
何回も頭を下げた。
見ず知らずの僕たちの為に自分たちの危険を冒してまで、見返りを求めずに力を貸してくれる、そんな姿に憧れた。
僕もこういう大人になりたいな。
「お前ら、荷物は持ったな。行くぞ!! 」
スキンヘッドさんの掛け声と共にヒナが捕らえられている奴隷商人の元へと向かっていった。