まえがき
今話だけ4000文字とかなり長いです。
☆
朝、朝食を終えて部屋に戻ってきた。
これから街を見て回る予定だ。
準備をしていると、ドアがノックされる。
こんな早くから誰だろう?
もしかして朝食を1階で取っていたときに忘れ物でもしただろうか。
「あ、やっぱここに居た! 今日こそ話させてもらうわよ……って閉めるなあぁぁぁぁ!! 」
ばたん……。
え、誰だっけあの子。僕達にここでの知り合いは居ないような。
レリカ先生は知っているが知り合いという程でも無いしただ教師として試験監督をしただけの人だ。先生達を除けば同年代で、しかも宿を訪ねてくるような友達なんて。
「それは本気で忘れておる顔じゃな。妾のダーリンは罪作りな男じゃの」
「それは昔からだよ、こんな近くに2人も好意を分かりやすく寄せてるメイドと魔法の【元】お師匠様が居るってのにね」
「ちょっとサツキ様!? ユリア様の前でなにバラしてるんですか!! 」
「安心しなさい、ミユ。相手を忘れてないかしら? 」
……思い出した! 昨日試験終わりに話しかけてきたあの子だ!
なんか後ろの方が騒がしい。
「あれ、なんかあった? 」
「ほらね」
「なるほどのぅ、こりゃお主ら苦労したはずじゃ……いわゆる鈍感系主人公というやつか」
苦笑いしているパプル達に首をかじける。
鈍感系主人公ってなんだろう。
ドア先で応対していたら、サツキがやってきて言う。
「こんな訳じゃからお主も苦労すると思うが、頑張るのじゃ。妾たちはハーレムに抵抗はないからの」
「は、はあぁぁぁ!?!? あんた何言い出すのよ!? 」
「はて? 妾が見るにお主はユリアの事が」
「まちなさい!! そんなわけがないでしょ! あーしが来たのは、この街を案内してあげるためよ! 」
うーん、
「別にいいよ。君だって学園生活が始まる前くらい好きなところに行きたいだろうし」
「あーしがこうしたいからそうしてるのよ、気にかけないでいいから良ければ行きましょうよ」
振り返ると皆うんうんと頷いている。
「じゃあお言葉に甘えて案内してもらおうかな」
僕がお願いすると顔を赤く染めながらも、心強く言った。
「あーしにまかせなさい! 」
「よろしくね、えーと名前なんだっけ」
「そういえば言ってなかったわね。ヒナメナ・ノーウェルよ、ヒナメナって呼んでくれて構わないわ」
「僕はユリア、で、皆はーーー」
「妾はパプルなのじゃ。種族はバハムートでダーリンの嫁なのじゃ」
「わたしはサツキ。ユリアの長年の師匠をやっている賢者だよ」
「わ、私はミユと申します、ヒナ様どうぞよろしくお願いします……あ、ユリア様のメイドをやっております」
「ユナだよ! もしかしたら気づいてるかもしれないけど、リーアウド王国の第三王女だよ。身分なんて関係なく仲良くしたいから普通に話して欲しいかな! 」
1人ずつ順番に横になって挨拶をした。
それを聞いたヒナは何故かぷるぷると震えている。
「どうしたの? 」
「全員同じ部屋で寝ていたの!?!?!? は、ハレンチだわ!!!! 」
それは僕も言ったんだよ、だけど誰も聞いてくれなくて……。なし崩し的に1部屋だけにして皆で寝たんだ。
「なっ……!? 同じ部屋に泊まっているだけでは飽き足らずひとつのベットで寝たの!? 」
僕はソファで寝ようとしたんだけどね、皆が(以下略)。
そこまで聞いたヒナはわなわなと身体を震わせ、口をパクパクさせて、かすれ声で一言。
「ほんとにアンタ何者なのよーーー!? 伝説の古竜バハムートが嫁で、美人師匠が居て、美少女メイドも居て、隣国の第三王女様まで侍らせて……」
「え? ただのハズレスキル所持者認定されて、実家を追放された無能だよ? 本当は最強のスキルだったみたいだけど」
「あーし、とんでもない人をライバル視しちゃったのね、変態だけど」
いや、変態って何だよ。変態じゃないわい。
「ほう? 名前も知らぬはずの妾達の泊まった宿、そして部屋まで探し出した女がダーリンを変態扱いとは傑作じゃの」
にやにやと悪い顔でパプルが尋ねると、顔を真っ赤にさせて黙り込んでしまう。
「ん、ほれほれ。黙りこくってどうしたのじゃ〜? 」
「うぅぅ……」
「いじめちゃダメだよ」
涙目になってきていて、流石に可哀想になったから止める。
「むむ……すまないのじゃ」
「こっちこそ旦那さんを変態呼ばわりしたのを謝るわ」
「妾はいつでもお主がこっち側に来るのを待ってるからの」
「う、うん……はっ!? いや、行かないわよ!! と、とにかく早く準備しなさい! 宿の外で待っといてあげるから、それじゃあね! 」
そう言って走り去っていった。
よし、待たせるのも悪いしパパっと準備して出かけよう。
☆
「ここは見ての通り武器屋よ、隣が防具屋、あっちが魔道具屋で、向かいのお店があーでこーで……」
指をさしながら一軒一軒教えてくれている。
ここまで数多くの店を教えてもらった。
しかし、一つだけ教えてくれなかったお店があった。
「ねーあのネオンがきらびやかに輝いた宿屋はどんなとこなの? 僕たちが泊まっている宿屋はあんなに派手じゃ無かったよね」
「あ、あれは! あーし達には関係のない場所よ! 」
「え、だけど宿屋って看板に書いてあるよ? 」
キラキラと赤ピンクに輝く看板を指さす。
「そ、その学生の身分では早いのよ」
「ピカピカなってるだけで学生では入れないの宿屋なの? 」
うーん、よく分からないや。
ユナとミユも分からないのか首をかしげている。
反対にサツキとパプルはニヤニヤしている。
「ししょ……サツキここ、宿屋じゃないの? 」
「弟子くんにはまだ早いよ〜……ふぇ、!? サツキ!? 」
「サツキがこの前そう言ったんじゃないか。それともやっぱ師匠って呼んだ方がいい? 」
「いや、その、一人の女として見て欲しいって言ったのはそういう意味じゃなくて……あぅぅ」
ぽっっっ……! と顔を赤く染めあげる。
「あれ、 違ったの? じゃあこれまで通り師匠って呼ぶね」
「……ゃ、その、サツキって呼んで欲しいな」
赤い顔を更に更に赤くして、ピカピカの宿屋のピンクの光並ひなっている。
さっきからよく分からないことだらけだけど、笑顔のサツキを見ていたら、なんでもよくなった。
「妾の次はサツキを口説いたか、ちゃくちゃくとハーレムが出来上がっておるな。もちろん妾が1番なのじゃがな。サツキは2番じゃ」
「本当は1番がいいけど、パプルは色々相談にも乗ってくれたからね! それでいいよ」
「ちょっと待ってください! わたしは!? 第三王女なんですよ、王女ですよ!? 普通メインヒロインじゃないですか!? この流れで行くとわたし3番目ですか? 第三王女だから3番目ってことですか!? 嫌ですよ〜!? 」
「私(わたくし)はユリア様にこれからも着いていけるのであれば何番目でも構いません」
皆がわちゃわちゃしだした。
特にユナが物凄く騒いでいる。
手をブンブンと振りながら必死に訴えかけてきたが、今この場で決めれることじゃない。
だって、ねぇ……?
第三王女ですよ? 元貴族の息子とはいえ今はなんの取り柄もない、家を追放された無能扱いされている男が本来お近付きになってはいけない存在だ。
「そんなことないです! ユリア君は無能なんかじゃないです」
「その気持ちは嬉しいんだけどね、周りのイメージが固まってしまってるんだ。ほら、試験の時もコソコソ言われてたでしょ」
「え? そんな事言われたっけ? 皆凄いって褒めてたのは聞いたけど」
きょとんと可愛らしく首をかしげるユナ。
確かに的破壊した後は、「すげー」だの「あいつ家を追放された無能だったんじゃねぇの? 」だの驚きの声をあげている受験生たちも居たな。
まさかこんなところまで追放された噂が広がってるとは思ってなかったから陰口叩かれてそれが聞こえた時は頭を抱えたくなった。
事実だから仕方ないかもだけどさ……。
ちょっと悲しい。
「そう気にするなて。あの場で実力を示してもなをダーリンを無能と蔑む能無しの方が無能じゃろて。あんなお遊びみたいな的当てにかすりもしてない落第貴族共の言葉なんて気にする必要ないのじゃ」
「そうだよ〜、弟子くんの凄さに気づけないなんてそれこそ無能だよ」
「その通りですよ! 」
「み、皆……」
皆からの暖かい言葉に胸が温まり、涙腺が緩まる。
そうだよな、くよくよ気にしたって無駄だ。
それにこれほどまでに慕ってくれる皆にも失礼だろう。
「ありがとう。僕、周りの声なんて気にしないようにするよ! 」
夕陽が沈んできている。綺麗なオレンジ色が半分だけ顔を覗かせている。
そんな夕陽の方向に向かって、力強く地面を踏みしめながら歩いて行った。
「ちょっと待なさいよおおおおお!!!! あんた達どれだけあーしを放置したら気が済むのよおおおおお!!! 」
あ、そういえばあーしちゃん……あれ、名前これであってたっけ。まあいいや、ずっと黙ってたから忘れちゃってたよ。
「誰があーしちゃんじゃ、ぼけ!! ヒナっつったでしょ! 人が黙ってたら見せつけるように代わり代わりに別の女とイチャイチャしやがって! もうしらないんだからあああああ」
反対方向に走り去っていった。
そっちは宿屋街とは真反対だけど、大丈夫なのだろうか。
あっちの方向にも宿屋はあるのかもしれないし、わざわざ追いかける必要もないか。
と、そんなこんなで宿屋へと帰った。
今日も疲れたな。明日も一日中休みだから何をするか考えながら眠りに落ちたのだった。
今話だけ4000文字とかなり長いです。
☆
朝、朝食を終えて部屋に戻ってきた。
これから街を見て回る予定だ。
準備をしていると、ドアがノックされる。
こんな早くから誰だろう?
もしかして朝食を1階で取っていたときに忘れ物でもしただろうか。
「あ、やっぱここに居た! 今日こそ話させてもらうわよ……って閉めるなあぁぁぁぁ!! 」
ばたん……。
え、誰だっけあの子。僕達にここでの知り合いは居ないような。
レリカ先生は知っているが知り合いという程でも無いしただ教師として試験監督をしただけの人だ。先生達を除けば同年代で、しかも宿を訪ねてくるような友達なんて。
「それは本気で忘れておる顔じゃな。妾のダーリンは罪作りな男じゃの」
「それは昔からだよ、こんな近くに2人も好意を分かりやすく寄せてるメイドと魔法の【元】お師匠様が居るってのにね」
「ちょっとサツキ様!? ユリア様の前でなにバラしてるんですか!! 」
「安心しなさい、ミユ。相手を忘れてないかしら? 」
……思い出した! 昨日試験終わりに話しかけてきたあの子だ!
なんか後ろの方が騒がしい。
「あれ、なんかあった? 」
「ほらね」
「なるほどのぅ、こりゃお主ら苦労したはずじゃ……いわゆる鈍感系主人公というやつか」
苦笑いしているパプル達に首をかじける。
鈍感系主人公ってなんだろう。
ドア先で応対していたら、サツキがやってきて言う。
「こんな訳じゃからお主も苦労すると思うが、頑張るのじゃ。妾たちはハーレムに抵抗はないからの」
「は、はあぁぁぁ!?!? あんた何言い出すのよ!? 」
「はて? 妾が見るにお主はユリアの事が」
「まちなさい!! そんなわけがないでしょ! あーしが来たのは、この街を案内してあげるためよ! 」
うーん、
「別にいいよ。君だって学園生活が始まる前くらい好きなところに行きたいだろうし」
「あーしがこうしたいからそうしてるのよ、気にかけないでいいから良ければ行きましょうよ」
振り返ると皆うんうんと頷いている。
「じゃあお言葉に甘えて案内してもらおうかな」
僕がお願いすると顔を赤く染めながらも、心強く言った。
「あーしにまかせなさい! 」
「よろしくね、えーと名前なんだっけ」
「そういえば言ってなかったわね。ヒナメナ・ノーウェルよ、ヒナメナって呼んでくれて構わないわ」
「僕はユリア、で、皆はーーー」
「妾はパプルなのじゃ。種族はバハムートでダーリンの嫁なのじゃ」
「わたしはサツキ。ユリアの長年の師匠をやっている賢者だよ」
「わ、私はミユと申します、ヒナ様どうぞよろしくお願いします……あ、ユリア様のメイドをやっております」
「ユナだよ! もしかしたら気づいてるかもしれないけど、リーアウド王国の第三王女だよ。身分なんて関係なく仲良くしたいから普通に話して欲しいかな! 」
1人ずつ順番に横になって挨拶をした。
それを聞いたヒナは何故かぷるぷると震えている。
「どうしたの? 」
「全員同じ部屋で寝ていたの!?!?!? は、ハレンチだわ!!!! 」
それは僕も言ったんだよ、だけど誰も聞いてくれなくて……。なし崩し的に1部屋だけにして皆で寝たんだ。
「なっ……!? 同じ部屋に泊まっているだけでは飽き足らずひとつのベットで寝たの!? 」
僕はソファで寝ようとしたんだけどね、皆が(以下略)。
そこまで聞いたヒナはわなわなと身体を震わせ、口をパクパクさせて、かすれ声で一言。
「ほんとにアンタ何者なのよーーー!? 伝説の古竜バハムートが嫁で、美人師匠が居て、美少女メイドも居て、隣国の第三王女様まで侍らせて……」
「え? ただのハズレスキル所持者認定されて、実家を追放された無能だよ? 本当は最強のスキルだったみたいだけど」
「あーし、とんでもない人をライバル視しちゃったのね、変態だけど」
いや、変態って何だよ。変態じゃないわい。
「ほう? 名前も知らぬはずの妾達の泊まった宿、そして部屋まで探し出した女がダーリンを変態扱いとは傑作じゃの」
にやにやと悪い顔でパプルが尋ねると、顔を真っ赤にさせて黙り込んでしまう。
「ん、ほれほれ。黙りこくってどうしたのじゃ〜? 」
「うぅぅ……」
「いじめちゃダメだよ」
涙目になってきていて、流石に可哀想になったから止める。
「むむ……すまないのじゃ」
「こっちこそ旦那さんを変態呼ばわりしたのを謝るわ」
「妾はいつでもお主がこっち側に来るのを待ってるからの」
「う、うん……はっ!? いや、行かないわよ!! と、とにかく早く準備しなさい! 宿の外で待っといてあげるから、それじゃあね! 」
そう言って走り去っていった。
よし、待たせるのも悪いしパパっと準備して出かけよう。
☆
「ここは見ての通り武器屋よ、隣が防具屋、あっちが魔道具屋で、向かいのお店があーでこーで……」
指をさしながら一軒一軒教えてくれている。
ここまで数多くの店を教えてもらった。
しかし、一つだけ教えてくれなかったお店があった。
「ねーあのネオンがきらびやかに輝いた宿屋はどんなとこなの? 僕たちが泊まっている宿屋はあんなに派手じゃ無かったよね」
「あ、あれは! あーし達には関係のない場所よ! 」
「え、だけど宿屋って看板に書いてあるよ? 」
キラキラと赤ピンクに輝く看板を指さす。
「そ、その学生の身分では早いのよ」
「ピカピカなってるだけで学生では入れないの宿屋なの? 」
うーん、よく分からないや。
ユナとミユも分からないのか首をかしげている。
反対にサツキとパプルはニヤニヤしている。
「ししょ……サツキここ、宿屋じゃないの? 」
「弟子くんにはまだ早いよ〜……ふぇ、!? サツキ!? 」
「サツキがこの前そう言ったんじゃないか。それともやっぱ師匠って呼んだ方がいい? 」
「いや、その、一人の女として見て欲しいって言ったのはそういう意味じゃなくて……あぅぅ」
ぽっっっ……! と顔を赤く染めあげる。
「あれ、 違ったの? じゃあこれまで通り師匠って呼ぶね」
「……ゃ、その、サツキって呼んで欲しいな」
赤い顔を更に更に赤くして、ピカピカの宿屋のピンクの光並ひなっている。
さっきからよく分からないことだらけだけど、笑顔のサツキを見ていたら、なんでもよくなった。
「妾の次はサツキを口説いたか、ちゃくちゃくとハーレムが出来上がっておるな。もちろん妾が1番なのじゃがな。サツキは2番じゃ」
「本当は1番がいいけど、パプルは色々相談にも乗ってくれたからね! それでいいよ」
「ちょっと待ってください! わたしは!? 第三王女なんですよ、王女ですよ!? 普通メインヒロインじゃないですか!? この流れで行くとわたし3番目ですか? 第三王女だから3番目ってことですか!? 嫌ですよ〜!? 」
「私(わたくし)はユリア様にこれからも着いていけるのであれば何番目でも構いません」
皆がわちゃわちゃしだした。
特にユナが物凄く騒いでいる。
手をブンブンと振りながら必死に訴えかけてきたが、今この場で決めれることじゃない。
だって、ねぇ……?
第三王女ですよ? 元貴族の息子とはいえ今はなんの取り柄もない、家を追放された無能扱いされている男が本来お近付きになってはいけない存在だ。
「そんなことないです! ユリア君は無能なんかじゃないです」
「その気持ちは嬉しいんだけどね、周りのイメージが固まってしまってるんだ。ほら、試験の時もコソコソ言われてたでしょ」
「え? そんな事言われたっけ? 皆凄いって褒めてたのは聞いたけど」
きょとんと可愛らしく首をかしげるユナ。
確かに的破壊した後は、「すげー」だの「あいつ家を追放された無能だったんじゃねぇの? 」だの驚きの声をあげている受験生たちも居たな。
まさかこんなところまで追放された噂が広がってるとは思ってなかったから陰口叩かれてそれが聞こえた時は頭を抱えたくなった。
事実だから仕方ないかもだけどさ……。
ちょっと悲しい。
「そう気にするなて。あの場で実力を示してもなをダーリンを無能と蔑む能無しの方が無能じゃろて。あんなお遊びみたいな的当てにかすりもしてない落第貴族共の言葉なんて気にする必要ないのじゃ」
「そうだよ〜、弟子くんの凄さに気づけないなんてそれこそ無能だよ」
「その通りですよ! 」
「み、皆……」
皆からの暖かい言葉に胸が温まり、涙腺が緩まる。
そうだよな、くよくよ気にしたって無駄だ。
それにこれほどまでに慕ってくれる皆にも失礼だろう。
「ありがとう。僕、周りの声なんて気にしないようにするよ! 」
夕陽が沈んできている。綺麗なオレンジ色が半分だけ顔を覗かせている。
そんな夕陽の方向に向かって、力強く地面を踏みしめながら歩いて行った。
「ちょっと待なさいよおおおおお!!!! あんた達どれだけあーしを放置したら気が済むのよおおおおお!!! 」
あ、そういえばあーしちゃん……あれ、名前これであってたっけ。まあいいや、ずっと黙ってたから忘れちゃってたよ。
「誰があーしちゃんじゃ、ぼけ!! ヒナっつったでしょ! 人が黙ってたら見せつけるように代わり代わりに別の女とイチャイチャしやがって! もうしらないんだからあああああ」
反対方向に走り去っていった。
そっちは宿屋街とは真反対だけど、大丈夫なのだろうか。
あっちの方向にも宿屋はあるのかもしれないし、わざわざ追いかける必要もないか。
と、そんなこんなで宿屋へと帰った。
今日も疲れたな。明日も一日中休みだから何をするか考えながら眠りに落ちたのだった。