「ユリア様?」

「弟子君?」


「「何か私達に言うことないのかな?? 」」


僕は今、元メイドのミユと昔からの師匠であるアリスに詰められている。 何故こうなったのか……それは少し話を遡るーーー。





あ、名前を聞いてなかったな。 話も殆ど出来なかったし……。

お姉さんを追いかけようと僕も席を立って追いかける。


「凄い勢いでアリスが去っていったが話は済んだのか? 」


廊下でミミス国王に声をかけられる。 お姉さんの名前はアリスだったんだな。


「いえ、実はーーー」


魔力量が分かることを伝えたら、ツンとした態度が吹き飛び詰め寄られるほど驚かれたこと。そして友達になりなさいと言い残し、走り去って行った事を伝える。


「他人の魔力量を測定出来ることにも驚いたが、あの【氷の女帝】と2つ名が付くほど、男を寄せ付けないアリスが自ら友達を望むとは……」


どうやらツンツンしてたのは僕の事が嫌いだからでは無かったみたい。 【氷の女帝】か、確かにアリスさんの雰囲気に合ってるな。

つけた人の才能が伺える。


「言伝で申し訳ないですがアリスさんに名前を教えておいて頂きたいです」

「了解した。アリスに伝えておく。それで話は変わるがゼウリアスの魔法学院についてなのだが……あの後ユナがどうしても君と行きたいとお願いしてきてな……良ければ一緒に入学してやってくれないか?もちろん都合があるなら無理強いはしないが」


言いにくそうにそう切り出してくる。国王としての勅令では無くユナのーー娘の「わがまま」を叶えてあげたい1人の父親としてのお願いのように見える。

それにしても魔法学院か……。正直行きたいとは思っていた。だが、


「僕の実力では到底合格出来るとは思いません」


なにせ【ハズレスキル所持者】なんだ。あの時バハムートさんを召喚出来たのも偶然だろう。

ステータスも全部0になってしまったしな。 そんな奴が世界最高峰の学院の試験に合格できるとは思わない。

「それは余り笑えない冗談ですな……はは……」

「冗談では無いんですけどね……」

「君なら絶対合格出来ると確信しているんだが……国王では無く父親として娘を安心して任せられるのは君だけなんだ……。どうか娘のためにも受けるだけ受けてやってはくれぬか? 」


頭を下げてくる国王。 国王にここまでお願いされると流石に断れない。 ユナの為にも、国王のためにも、そして何より自分自身の為にもここは入学試験を受けてみよう!


「分かりました、では任せてください。命にかえてもユナを守ります」

「助かる、本当にありがとう。明日にでも出発させるから荷物を纏めておいてくれ。 ……娘が倒れた君を背中に背負って涙ぐみながら帰ってきた時はなんとも頼りない男を連れてきたなと思ったが、ここからは驚きの連続だったな」


昔の事を思い出すかのように呟く国王。


「ははっ、やっぱり頼りなく見えましたか?」


追放された身だもんな。しかも、女の子におんぶされる男など、誰が見てもそう思うだろう。


「最初だけだがな。【鉄拳】とまで呼ばれるアルスの拳を受け止め、逆に殴り飛ばし、封印されしSSS級指定の【殺戮の紫竜】バハムートを《召喚魔法》で容易く呼び出し、手懐けるに飽き足らず嫁にまでしてしまう……そんな奴が頼りなく思えるか!!安心して娘を任せられる」


次はこちらが涙ぐむ番だった。 まさか、実の親に見捨てられ神にも見捨てられた僕が人に認められるなんて……これだけでも入学試験は頑張れるというものだ。


「ありがとうございます! 」

「うむ。ユリア、君はグリアント家を追放されてから1人でここまで来たのか? 」

「はい、1人で……あ……やばい」


やばい……1番忘れてちゃいけないこと忘れてた……殺される……。


「ど、どうしたのかね?急に顔色が悪く見えるが」


そう……だって……。


「師匠とミユ忘れてたあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!????」


やばい今すぐ《念話》しないと!?


「ええと、《念話》!! 」


……ーーーー。

……ーーー。

……ーー。

…ー。