スキルの議。
それは、15歳の誕生日を迎えると誰もが教会に出向き、神からスキルを与えられる日だ。
このスキルの議で今後の人生が大きく変わる。
例えば《剣聖》のスキルが与えられれば将来安泰は確定だ。その名の通り剣に関すること全てが完璧に手に入る。
僕の家、すなわちグリアント家は代々《魔術師》向きで更に最上級のスキルが与えられ、王国屈指の魔術師として他の家よりも優遇されてきた。
普通、貴族の中でもここまで優遇される事は少ない。
何故グリアント家だけ?……それは父であるモートンが魔王を討伐した勇者パーティーに属し、大きく貢献した為だ。
自分の領地を持っているのもその褒美としてである。 もしもその息子僕が《魔術師》向きのスキルで尚且つ最上級スキルでないとこれまでの優遇は取り消される。
そのため、父から多大なプレッシャーを受けており僕は毎日毎日鬼のような特訓をしていた。
それこそ並の子供じゃ死んでしまうような……。 だからという訳じゃ無いが強いスキルが手に入るに違いないと僕自身も信じている。
「ユリアよ、ついにこの日がやってきたな」
「はい、父上」
ゆっくりと頷く。
「分かっていると思うが《魔術師》向きスキルなのは当然、最上級を与えられるんだぞ? 」
プレッシャーをかけてくるが気持ちは分かるので頷く。
そうして教会に着くと周りがざわつく。
「ユリア様がいらっしゃったぞおおおおお!! 」
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ素敵いいいいいいいいいいいいい!!!! 」
「ぶひぃ!ぶひぃ! 」
1人が声を発するやいな歓声が上がる。
って誰だよ! どさくさに紛れて豚の鳴き声発したのは。
しかし、僕の事を快く思わない人もいる。
「はぁ?なんで俺達が来た時にはこんな歓声が上がる所か目線すら誰も合わさなかったっていうのにお前が来た時にだけ歓声が上がるんだ? 」
「どうせスキルなんか与えられねぇだろうな、与えられたとしてもせいぜいゴミスキルだろ」
兄であるギズルとザンスだ。 この2人はいつもこうやって嫌がらせをしてきたりする。
「そ、それは……」
お前らが問題行動ばっかりして人々に迷惑をかけてるからだろ……そう思ったが口には出さない。
「あぁん?ハッキリ言えやクソがぁぁぁ!!!! 」
バコォォォォォォン!!
突如殴られ、柱まで吹っ飛ぶ。
「こんなんも避けれねぇのかよ?? 」
当たり前だ。僕だってまさかこんなに人がいる場で殴られるとは思わない。
常人ならこの場で殴ったりなんかしないだろう。
それにしても目の前で人が殴られてるというのに誰も助けようとしない。
……ギズル達に目をつけられたくないからだろう。 いや、1人だけ守ってくれる人は居るがこの場には居ない。
なんでも大事な用が出来たからとか。 僕のスキルの儀の日を誰よりも楽しみに待ってくれていた人でもあるだけに残念だ。
出来たら一緒に来て欲しかったな……。 そんなことを考えていると時間となり代理官に呼ばれた。
代理官とは神がスキルを与える仲介をする言わば神の代理だ。 その事から【代理官】と呼ばれる。
「それではこれよりグリアント家三男、ユリア様のスキルの儀を始めさせて頂きます!! 」
また、歓声と怒号が聞こえる。 台座の上に上がり、用意されている椅子に座る。
「では、始めます」
「お、お願いします! 」
緊張で声が震える。
だ、大丈夫、あんな地獄の様な特訓をしてきたんだ。
代理官に目の前の無色の水晶玉を両手で包むように触りなさいと促され、指示通りにする。
すると水晶玉が光り、代理官が持っている板のような物に吸い込まれる。
「おめでとうございます! スキルが与えられました!! ユリア様のスキルは……」
代理官の言葉が急に止まる。 どうしたのだろう?と思い尋ねるが応答が無い。
「今までこんなスキル見た事無いぞ……? いやまさか……」
焦ったようなそれでいて困惑しているような顔でぶつぶつと呟いている。
「ええい!何をしておる!さっさとせんかぁぁぁぁぁぁ!!!!! 」
父が痺れを切らし代理官に詰め寄り、そして胸ぐらを掴み怒声をあげる。
「そ、その落ち着いて聞いて下さいね? 」
声を震わせながらそう言われる。 嫌な予感がするが自分を信じて小さく頷く。
「ユリア様のスキルは《クリエイティブモード》というスキルでございます……」
くりえいてぃぶもーど?そんなスキル聞いたこともないな。
それは父も同じだったらしく首を傾げている。
「申し上げにくいのですが【全スキル一覧】にも載っておらず……今までこのような例を見たことがありません」
「要するにどういう事だね? 」
「【全スキル一覧】にも載ってないとなるとハズレスキルの可能性が高いです」
な、ハズレスキルだと!?そんな訳無いだろ。
というかもうちょっとちゃんと調べろよ!?
僕がどれだけ修行をしてきたか。
チラッと父の顔を見るとみるみる顔が青ざめていきその中には怒りも含まれている。
父がキレるとどうなるか僕や兄達が1番よく分かっている。
「ち、父上!スキルを発動してみます!! 」
まだハズレスキルと決まった訳じゃ無い。【全スキル一覧】に載っていないって事は裏を返せば新しいスキル……僕が神に認められて専用スキルを与えて下さったのかもしれい。
とにかく確かめてみる価値は十分にある。
その言葉に父も我に返りやってみろとスキル使用の許諾を受ける。
確かスキルはまず身体に馴染ませるためにスキル名を言わないといけないんだったけ。
「えっと《クリエイティブモード》発動! 」
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《β版》【1ページ目】 ・【←木の剣→】 ・【←木箱→】 ・【←ミニポーション→】
※β版の為、使用可能なスキルは【体験版】と変わりません。
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半透明なウィンドーが目の前に現れる。 始めてみるがなんとなく使い方が分かり、試しに木の剣の文字をタップしてみる。
すると、目の前に木の剣がボトッと音を立てながら落ちてきた。
え、まさかこれだけ……?
「おいおい、木の剣なんか50Gもあれば買えるぞ? 」
「いやいや木の剣なんか使い切りのゴミ武器じゃねえか50Gでも誰も買わねえだろ」
「やっぱりハズレスキルじゃん」
教会が騒然となる。
勇者パーティーに属し、魔王を討伐した息子の1人が《ハズレスキル》持ちとなったのだから。
恐る恐る後ろを見ると皆、道端に落ちている魔物の糞を見るような目でこちらを見ていた。
兄達はもちろん父も代理官も……この場に居る全ての人間が同じ目をしている。
頭の中が真っ白になり、何も考えれなくなる。
僕の努力は無駄だったのか……? 嘘だ……嘘だろ?!
これは悪い夢だ。
こんな事が現実な訳が無い。
「やっぱり俺の予想通りゴミスキルだったじゃねぇか!!さっさとどけ!次は俺の番だ」
「スキルが与えられただけでも感謝しろよな!!この雑魚が!!! 」
ギズルとザンスがぽつんと佇んでいる僕に罵声をかけると勝手にスキルの儀を始める。
兄達は去年儀式を受けるはずだったのだが全員同時に受けたいと、今年にずらしたのだ。
「ギズル様のスキルは……なんと!?《極寒の魔術師》!?!?最上級スキルが出ましたぞ!! 」
「ふん、当然だ!当たり前の結果だな、俺は何処かのゴミスキル持ちとは違って毎日修行をしてきてたからな!変な女を師匠と仰いでろくに修行をしてないようなクズとは違う!!! 」
は?こいつが修行をしてきた??全く修行もせずに毎日遊び呆けてたくせに。何をそんな大嘘を。 ……というかこいつは今なんて言った?
「おい……お前今なんて言った? 」
「は?俺は毎日修行をしてたがお前はしてないって言っただけだ」
「嘘乙……じゃなくて、その後だよ」
「変な女を師匠と仰いで遊び暮れてたって言ったが?それがどうした事実だろ? 」
聞き間違いでは無かったらしい。悪びれる様子もなく言い放たれ言葉を噛み締めていく。
僕の事を馬鹿にするのは別にこの際どうでも良い、だが師匠を馬鹿にする事は許さない。
僕の中で何かがプツンと切れる音がした。
「おい!! 何しやがるてめぇ! 」
気がつくとギズルの胸ぐらを掴みんで、殴りかかろうとした寸前、傍に居た父とザンスに取り押さえられてしまい、情けなくとも抵抗も虚しく引き離され出口に放り投げられる。
「ハズレスキルを引いた上でまだグリアント家に泥を塗る気か貴様ァ!!!! ……お前はもう追放だ!!二度とウチの敷居を跨ぐことは許さん」
「ハッざまぁねぇぜ!じゃあなハズレスキル持ちの無能ちゃん」
腹を殴られた痛みを抑えながらなんとか答えを絞り出す。
「僕は絶対にお前らの事を許さない!!絶対に……絶対に」
そして3人に決別を言い渡し教会を出て行った。
それは、15歳の誕生日を迎えると誰もが教会に出向き、神からスキルを与えられる日だ。
このスキルの議で今後の人生が大きく変わる。
例えば《剣聖》のスキルが与えられれば将来安泰は確定だ。その名の通り剣に関すること全てが完璧に手に入る。
僕の家、すなわちグリアント家は代々《魔術師》向きで更に最上級のスキルが与えられ、王国屈指の魔術師として他の家よりも優遇されてきた。
普通、貴族の中でもここまで優遇される事は少ない。
何故グリアント家だけ?……それは父であるモートンが魔王を討伐した勇者パーティーに属し、大きく貢献した為だ。
自分の領地を持っているのもその褒美としてである。 もしもその息子僕が《魔術師》向きのスキルで尚且つ最上級スキルでないとこれまでの優遇は取り消される。
そのため、父から多大なプレッシャーを受けており僕は毎日毎日鬼のような特訓をしていた。
それこそ並の子供じゃ死んでしまうような……。 だからという訳じゃ無いが強いスキルが手に入るに違いないと僕自身も信じている。
「ユリアよ、ついにこの日がやってきたな」
「はい、父上」
ゆっくりと頷く。
「分かっていると思うが《魔術師》向きスキルなのは当然、最上級を与えられるんだぞ? 」
プレッシャーをかけてくるが気持ちは分かるので頷く。
そうして教会に着くと周りがざわつく。
「ユリア様がいらっしゃったぞおおおおお!! 」
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ素敵いいいいいいいいいいいいい!!!! 」
「ぶひぃ!ぶひぃ! 」
1人が声を発するやいな歓声が上がる。
って誰だよ! どさくさに紛れて豚の鳴き声発したのは。
しかし、僕の事を快く思わない人もいる。
「はぁ?なんで俺達が来た時にはこんな歓声が上がる所か目線すら誰も合わさなかったっていうのにお前が来た時にだけ歓声が上がるんだ? 」
「どうせスキルなんか与えられねぇだろうな、与えられたとしてもせいぜいゴミスキルだろ」
兄であるギズルとザンスだ。 この2人はいつもこうやって嫌がらせをしてきたりする。
「そ、それは……」
お前らが問題行動ばっかりして人々に迷惑をかけてるからだろ……そう思ったが口には出さない。
「あぁん?ハッキリ言えやクソがぁぁぁ!!!! 」
バコォォォォォォン!!
突如殴られ、柱まで吹っ飛ぶ。
「こんなんも避けれねぇのかよ?? 」
当たり前だ。僕だってまさかこんなに人がいる場で殴られるとは思わない。
常人ならこの場で殴ったりなんかしないだろう。
それにしても目の前で人が殴られてるというのに誰も助けようとしない。
……ギズル達に目をつけられたくないからだろう。 いや、1人だけ守ってくれる人は居るがこの場には居ない。
なんでも大事な用が出来たからとか。 僕のスキルの儀の日を誰よりも楽しみに待ってくれていた人でもあるだけに残念だ。
出来たら一緒に来て欲しかったな……。 そんなことを考えていると時間となり代理官に呼ばれた。
代理官とは神がスキルを与える仲介をする言わば神の代理だ。 その事から【代理官】と呼ばれる。
「それではこれよりグリアント家三男、ユリア様のスキルの儀を始めさせて頂きます!! 」
また、歓声と怒号が聞こえる。 台座の上に上がり、用意されている椅子に座る。
「では、始めます」
「お、お願いします! 」
緊張で声が震える。
だ、大丈夫、あんな地獄の様な特訓をしてきたんだ。
代理官に目の前の無色の水晶玉を両手で包むように触りなさいと促され、指示通りにする。
すると水晶玉が光り、代理官が持っている板のような物に吸い込まれる。
「おめでとうございます! スキルが与えられました!! ユリア様のスキルは……」
代理官の言葉が急に止まる。 どうしたのだろう?と思い尋ねるが応答が無い。
「今までこんなスキル見た事無いぞ……? いやまさか……」
焦ったようなそれでいて困惑しているような顔でぶつぶつと呟いている。
「ええい!何をしておる!さっさとせんかぁぁぁぁぁぁ!!!!! 」
父が痺れを切らし代理官に詰め寄り、そして胸ぐらを掴み怒声をあげる。
「そ、その落ち着いて聞いて下さいね? 」
声を震わせながらそう言われる。 嫌な予感がするが自分を信じて小さく頷く。
「ユリア様のスキルは《クリエイティブモード》というスキルでございます……」
くりえいてぃぶもーど?そんなスキル聞いたこともないな。
それは父も同じだったらしく首を傾げている。
「申し上げにくいのですが【全スキル一覧】にも載っておらず……今までこのような例を見たことがありません」
「要するにどういう事だね? 」
「【全スキル一覧】にも載ってないとなるとハズレスキルの可能性が高いです」
な、ハズレスキルだと!?そんな訳無いだろ。
というかもうちょっとちゃんと調べろよ!?
僕がどれだけ修行をしてきたか。
チラッと父の顔を見るとみるみる顔が青ざめていきその中には怒りも含まれている。
父がキレるとどうなるか僕や兄達が1番よく分かっている。
「ち、父上!スキルを発動してみます!! 」
まだハズレスキルと決まった訳じゃ無い。【全スキル一覧】に載っていないって事は裏を返せば新しいスキル……僕が神に認められて専用スキルを与えて下さったのかもしれい。
とにかく確かめてみる価値は十分にある。
その言葉に父も我に返りやってみろとスキル使用の許諾を受ける。
確かスキルはまず身体に馴染ませるためにスキル名を言わないといけないんだったけ。
「えっと《クリエイティブモード》発動! 」
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《β版》【1ページ目】 ・【←木の剣→】 ・【←木箱→】 ・【←ミニポーション→】
※β版の為、使用可能なスキルは【体験版】と変わりません。
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半透明なウィンドーが目の前に現れる。 始めてみるがなんとなく使い方が分かり、試しに木の剣の文字をタップしてみる。
すると、目の前に木の剣がボトッと音を立てながら落ちてきた。
え、まさかこれだけ……?
「おいおい、木の剣なんか50Gもあれば買えるぞ? 」
「いやいや木の剣なんか使い切りのゴミ武器じゃねえか50Gでも誰も買わねえだろ」
「やっぱりハズレスキルじゃん」
教会が騒然となる。
勇者パーティーに属し、魔王を討伐した息子の1人が《ハズレスキル》持ちとなったのだから。
恐る恐る後ろを見ると皆、道端に落ちている魔物の糞を見るような目でこちらを見ていた。
兄達はもちろん父も代理官も……この場に居る全ての人間が同じ目をしている。
頭の中が真っ白になり、何も考えれなくなる。
僕の努力は無駄だったのか……? 嘘だ……嘘だろ?!
これは悪い夢だ。
こんな事が現実な訳が無い。
「やっぱり俺の予想通りゴミスキルだったじゃねぇか!!さっさとどけ!次は俺の番だ」
「スキルが与えられただけでも感謝しろよな!!この雑魚が!!! 」
ギズルとザンスがぽつんと佇んでいる僕に罵声をかけると勝手にスキルの儀を始める。
兄達は去年儀式を受けるはずだったのだが全員同時に受けたいと、今年にずらしたのだ。
「ギズル様のスキルは……なんと!?《極寒の魔術師》!?!?最上級スキルが出ましたぞ!! 」
「ふん、当然だ!当たり前の結果だな、俺は何処かのゴミスキル持ちとは違って毎日修行をしてきてたからな!変な女を師匠と仰いでろくに修行をしてないようなクズとは違う!!! 」
は?こいつが修行をしてきた??全く修行もせずに毎日遊び呆けてたくせに。何をそんな大嘘を。 ……というかこいつは今なんて言った?
「おい……お前今なんて言った? 」
「は?俺は毎日修行をしてたがお前はしてないって言っただけだ」
「嘘乙……じゃなくて、その後だよ」
「変な女を師匠と仰いで遊び暮れてたって言ったが?それがどうした事実だろ? 」
聞き間違いでは無かったらしい。悪びれる様子もなく言い放たれ言葉を噛み締めていく。
僕の事を馬鹿にするのは別にこの際どうでも良い、だが師匠を馬鹿にする事は許さない。
僕の中で何かがプツンと切れる音がした。
「おい!! 何しやがるてめぇ! 」
気がつくとギズルの胸ぐらを掴みんで、殴りかかろうとした寸前、傍に居た父とザンスに取り押さえられてしまい、情けなくとも抵抗も虚しく引き離され出口に放り投げられる。
「ハズレスキルを引いた上でまだグリアント家に泥を塗る気か貴様ァ!!!! ……お前はもう追放だ!!二度とウチの敷居を跨ぐことは許さん」
「ハッざまぁねぇぜ!じゃあなハズレスキル持ちの無能ちゃん」
腹を殴られた痛みを抑えながらなんとか答えを絞り出す。
「僕は絶対にお前らの事を許さない!!絶対に……絶対に」
そして3人に決別を言い渡し教会を出て行った。