1話:フランベルク帝国の第一皇子ジークと第一皇女リエルは、英雄の血を引く兄妹として国民から愛され、勇者の父である皇帝ヴィルヘルムと聖女の母である皇后エリザベートと共に幸せな日々を過ごしていた。
しかし、そんな幸せな生活は魔王討伐15周年の記念パーティの日に、突然終わりを告げる。
皇帝ヴィルヘルムがパーティ会場にて盃のワインを呷った途端、その場で突然倒れて急死してしまったのだった。
公衆の面前で皇帝が毒殺されたという事件で国中は混乱に陥り、皇帝の家族もまた悲しみに暮れるより他になかった。
そんな悲しみに暮れる家族の前に現れたのは、フランベルク帝国の宰相を務める男、ハインツであった。

2話:ハインツは夫を失い未亡人となった皇后エリザベートに求婚するも、エリザベートはこれを断る。
しかしその翌日、ジーク達家族は突然衛兵に取り囲まれてしまう。
何でもヴィルヘルムがワインを飲むのに使用した盃は元々エリザベートがヴィルヘルムにプレゼントした物であり、その盃の底とヴィルヘルムの遺体には使用が固く禁じられた『死の呪い』の紋章が刻まれていたというのだ。
勿論エリザベートにとってその呪いの事は全く心当たりが無く、わざわざ愛する夫を殺す理由も全く無いので彼女は冤罪を主張した。
しかし衛兵達は有無を言わさず、子供達諸共エリザベートを連行しようとする。
エリザベートは身を挺してジークとリエルを庇い、彼女の子供達を逃すことに成功するも、自身は衛兵によって捕らえられる。
ジークとリエルは無事に城から逃げ出したが、逃亡中に母がギロチンで公開処刑される瞬間を目の当たりにしてしまう。
ジークはなんとか涙を堪えるも、リエルがその場で大泣きしてしまった事により周囲にバレてしまい、再び追われる事となる。
しかも街には至る所にジークとリエルの手配書が貼られており、国中から指名手配されてしまった彼らは事実上国を追われる身となってしまった。
一方盃に『死の呪い』をかけ、ヴィルヘルムを謀殺した張本人であるハインツは、国を思い通りに動かす上で邪魔な皇帝一家を始末し、おまけにの求婚を断られた事への溜飲が下がった事に満足しながらほくそ笑むのであった。

3話:ジーク達兄妹は祖国の追っ手から逃げ続け、海を越えやがて辿り着いたのは魔の大陸。
人の大陸では見られない強く恐ろしい魔物が数多く闊歩し、闇の魔力を帯びた強い瘴気が漂う魔の大陸は、いくら勇者と聖女の血を引いているとはいえ人間の子供二人が生き抜くには非常に厳しく、まさに地獄と呼べる環境であった。
着いて早々魔物に追いかけられて地下大洞窟(アビス)へと繋がる穴に転げ落ち、そこで再び魔物に襲われ、ジークはリエルを魔物から庇って左腕に重傷を負ってしまう。
空腹と激痛、そして疲労により衰弱し、最早彼の命もこれまでかと思われた。
だが、意識を失う寸前の彼の目に映り、耳に響いたのは、大切な妹の泣き腫らした顔と悲痛に泣く声。
その瞬間、彼に生きる気力と黒い意志が湧き上がってきた。
父を殺め、母に罪を被せて処刑し、自分達兄妹をこの地獄へと追いやったハインツとフランベルク帝国。
そいつらへの復讐を遂げるまで、死ぬ訳にはいかない。
そして何があっても、妹は自分が守ってみせる。
そう心に決めたジークは、リエルと共にこの地獄のような修羅場での生活に身を投じていく事となった。
魔物の肉を喰らい、血を啜り、何度もその毒で病を貰い、何度も死にかけた。
それでも復讐を成し遂げたいという想いと互いに支え合って力になりたいという想いで、必死にこの地獄を二人で生き抜いていく。
そしてやがて、6年の歳月が過ぎ去った。
その頃にはジークとリエルは人間から魔族と化した事で、容姿も強さも性格も以前の面影などほとんど感じられない程にまで豹変していたのであった。
国を追われ、魔族と化した二人の復讐への道のりはまだ、始まったばかり。