「オリン、君には失望したよ。このパーティから出ていってもらおうか」

「は? 急に何を言い出してんだお前」

「きっ、君は自分の立場が分かってるのか!? Sランクパーティ〈ボトーダルンタクス〉のリーダーである僕が君に追放を言い渡してるんだぞ!? 」

「立場も何も俺だってパーティの一員だからお前に文句を言う資格くらいあるだろ。んで? 追放って冗談抜きで本気で言ってんのか? 」

ぽりぽりと耳をかきながらだるそうに反論する。

「当たり前だろ! 」

「そうか……」

拳を握りしめる。

そう言い、俯いたオリンを見て、好機と見たリーダーのムノンダは早口でまくし立てる。

「ふん! やっと状況が分かったようだね! 遅いんだよ……と、まぁいい。嫌だろぅ? 勇者パーティに最も近くなっているこの〈ボトーダルンタクス〉を追放されるだなんて不名誉! 国中…いや、世界中から後ろ指を指され、軽蔑され、蔑称されるだろうねぇ! んんぅ? いいのかなぁ? 僕は優しいからね。今ここで土下座して今までの行動を謝罪したなら追放は取り消してあげてもいいんだよぉ? 」

「ふあぁ〜、ん? あぁ、すまん。話が長くて欠伸が出た。それとーーー」

ぱちんっ、と指を鳴らしムノンダと俺との間に立てていた透明のシールドを解除する。

「な、なにをしたんだ」

「はぁ、こんな簡単なことも分からないのか? お前仮にもSランク冒険者だろ、しかも勇者に最も近いとか言われてる」

「さっき言っただろそれは! で! どうするんだお前は! 」

「土下座のことか? するわけないだろ、頭沸いてんのか」

「きぃぃさあぁぁぁぁまあああああ!!!!! 」

「ちょっと、やめてよ!! パーティメンバーを殴っただなんて噂が広まったらどうするのよ」

オリンに殴りかかろうとしたムノンダをすんでのところで押さえ込んでいる女の名前はニナンダ、魔術師だ。

「ふぅぅぅぅぅ……!! オリン、貴様は追放だ! きさまはあぁぁぁ……ここで死ねええええええええ!!!!!!! 」

かなりの威力で崖から突き落とされたオリンは流れに身を任せて、腕を組みながら目を閉じるのであった。

そう、オリン達が話し合っていた場所。
そこはSSSランクダンジョンの浅い階層。

ムノンダがSSSランクダンジョンの浅い階層の魔物を数匹倒せばSSSランクダンジョンの魔物を倒したSランクパーティとして手っ取り早く勇者になれると考え、危険も顧みずに潜ったのだ。

SSSランクダンジョン【ハデスドール】。
世界災厄の超危険指定ダンジョン。

その崖から落とされたのであったーーー。