異世界へ転生し、木の精霊のリアと草原で一緒に暮らすことになり、まずは生活する上で必要な物について考えてみる。

「リアは、植物を出せるっていう話だったけど、野菜なんかも出せるの?」

「もちろん! 例えば、こんなのとか!」

 リアが手をかざすと、目の前の地面に突然キャベツが生える。

「やっぱり、リアはすごいな」

「でしょ! えへへ、カイ君に褒められた!」

 手をかざしただけで野菜が出てきたので、素直に凄いと言ったただけでリアが満面の笑みを浮かべて見つめてくる。

 それはともかく、注意しないとすぐに子ども扱いして抱きつこうとしてくるのは困ったものだけど。食べ物の心配はなさそうだが、リアの行動には困ったことになるかもしれないな。

 ただ、野菜や果物ばかりだと、お肉が食べたくなったりするかも。

 とはいえ、周辺に動物はいるそうなので、肉を食べたい欲求が限界まで来たら、リアに相談してみようか。

「あ! リア。この辺りって、夜は大丈夫なの?」

「大丈夫って?」

「いや、壁とか柵とかもないから、寝ていたら動物に襲われるなんてことがないかなと思って」

「それなら大丈夫! 木の上で寝れば良いんだよ! 木を登ったり、枝まで届いたりするような大きな動物は、この辺りにはいない……というか、そもそもこの辺りに動物自体が少ないから、安心して」

 なるほど、木の上か。

 一番下の枝はかなり太そうだし、今の子供の身体なら眠れそうだけど、問題が二つある。

 一つは、その木の枝が俺の身長よりも遥かに高いこと。

 もう一つは、木の上で安眠出来るかどうかだな。

「もしも寝ている時に、あの高さから落ちたら危ないよね」

「それも大丈夫だよ! そうだね、そろそろ陽が沈むし、実際に寝てみよう!」

「え? もうそんな時間なの? じゃあ、頑張って登ってみるよ」

 そう言ったものの、かなり太い木だし、真っすぐで足をかけたりする場所がないから、登るのがかなり難しい。

「カイ君。リアお姉ちゃんが運んであげるから、大丈夫だよ」

「え? 運ぶ……って、どうやって?」

「こうやってね」

 リアが、木登りに苦戦していた俺の身体を抱きかかえると、その場で立ち尽くす。

 あれ? 何もしないのか? と思っていたら、スルスルとリアごと俺の身体が上に登っていく。

 リアは身動き一つせずに枝の上に辿り着き、そのまま枝の上で寝転びだした……って、待った! リアが身体を倒そうとしている先には何も無いっ!?

「リアっ! ……あれ?」

「ふふふ。大丈夫って言ったでしょ。絶対に落ちないし、切れたりもしないから、心配しないでね」