ラヴィのお父さんにニンジンを渡し、再びここで一緒に暮らすようになって数日が経った。

「カイ先生ー! 今日は何の実験なん?」

「えっとね。俺の故郷でオーブントースターって呼ばれていた物だよ」

 ラヴィのお父さんから火の精霊石をもらったので、ラヴィに腕輪を借りなくても、火を使う魔法陣に挑戦出来るようになったのはありがたい。

 加えて、兎耳族の村へ行く時に作った移動用の魔法陣の様に、かなり長めのプログラム……もとい、条件が書けることもわかったので、日本の家電の再現が出来ないか、いろいろ試しているところだ。

「へぇー。よくわからんけど、カイ先生の作る物やからすごいんやろなー。昨日の製氷機やったっけ? 氷が出てくる魔法なんて、初めて見たもん」

 ラヴィが言った製氷機は、先日の速度がマイナスになった時の応用で、ディーネの水の温度をマイナスにしたら出来てしまったんだよな。

 ディーネによると、氷は滅多に人前に出ない別の精霊が担っているらしくて、氷が作れる魔法陣は、革命だと言われてしまった程だ。

「さて、製氷機は上手くいったけど、オーブントースターはどうかな?」


≪もしも、設置された金属の箱の扉が閉められたら熱を発し、扉が開けられたら熱を止める≫


 火の精霊の力が込められた精霊石で、こんな魔法陣を作ってみた。

 肝心の金属の箱――オーブントースターのイメージをメルに伝え、既に作ってもらっているので、底に精霊石を設置すると、リアに出してもらったコーンを、蓋と連動して動く金網の上に乗せる。

 そのまま蓋を閉め、少し待って蓋を開けてみると、良い感じに焼けていそうだ。

 なので、コーンを少し回転させ、熱される部分を変えて再び蓋を閉める。

 おそらく、小さな精霊石だから、ラヴィの腕輪みたいに強力な火力ではなく、正にイメージしていた通りの火力になっているのだろう。

 それからしばらく待って扉を開けると……しっかりコーンが焼けていた。

「はい、ラヴィ。半分どうぞ」

「カイ先生。これは?」

「焼きコーン……もどきかな。俺の国では、豆から作ったソースを塗って焼いたり、バターを混ぜて焼いたりするんだよ。今回は塩を振っただけだから、どうかな? あ、熱いから気を付けて食べてね」

 焼けたコーンをナイフで半分に切り、ラヴィと一緒にかじってみるけど……うん、悪くない。

 たぶん、リアが作ってくれたコーンの味が良いんだろうな。

 ただ俺には、どうしても日本のイメージがあるから、醤油の香りと味が欲しくなってしまう。

 ノエルが作ってくれた、地下の発酵室にある醤油の完成が待ち遠しいな。

「熱っ! ……でも、美味しい!」

「ラヴィの口に合って良かったよ」