小麦粉を作ってもらった後、数日掛けていろいろと試してみた結果、胡椒や砂糖っぽい調味料もリアが作り出せることがわかった。
さすがに植物系の調味料でも、発酵させたりしないといけないからか、醤油や味噌をリアが作ることはできなかったけど、ノエルに地下の発酵室を作ってもらい、種麹を作ったりして、試行錯誤の末、醤油や味噌っぽいものに近付いた気はする。
ただ、ちゃんとした醤油や味噌にするには、これを長期間発酵させないといけないけど、それでも大きな進歩だと思う。
というわけで、今日は小麦粉と砂糖を使い、ドーナツを作ってみようと思ったんだけど、思わぬトラブルに見舞われる。
「あれ? ラヴィ。火が点かないよ?」
「あー、遂にこの時が来てもーたか。精霊石に込められていた力を使い切ってもーてん」
「あ! そういうこと!?」
ラヴィとしては、一日に一回くらいしか使うことが無いと思っていたらしいんだけど、俺が作る料理が美味しいため、俺が一日三食使うのを止められなかったのだとか。
「そっか。ごめん……限りがあるのに、俺が調子に乗って使い過ぎちゃったんだね」
「いやいや、カイ先生は悪くないって。むしろ、ウチがご飯を作ってもらっていたわけやし。けど、どないしょー! もうカイ先生のご飯がやないと、ウチの喉を通らへんわぁぁぁっ!」
まぁとりあえず鳥料理はなしかな。鳥肉を生で食べるのは怖いし。
でも火が使えなくても、いつもリアが作ってくれているサラダは美味しいし、火を通さなくても食べられるけどね。
最近は、塩と胡椒とオリーブオイルでドレッシングを作れるようになったから、元々野菜の旨味がしっかり感じられて美味しいリアの生野菜サラダが、さらに美味しくなったんだ。
とはいえ、小麦粉や鳥肉っていう食材が手に入るようになった今、サラダだけの生活はちょっと辛いけど。
ラヴィではないけど、喉を通らないというか、舌が肥えてしまったのかも。
「ディーネ。火の精霊石に込められていた力が無くなっちゃったらしいんだけど、どうすれば良いのかな?」
「んー、いちばんはやいのは、ひのせいれいをよぶことでち。だけど、カイがひのせいれいをよんだら、もうせいれいせきは、いらないとおもうでち」
まぁそうだよね。ディーネの言う通りで、火の精霊を呼んで精霊石に力を込めてもらわなくても、火の精霊が呼べるなら、俺の魔力を使って火を点けてもらえば良いんだからさ。
火の精霊を呼ぼうと思ったら、リアに乾いた木をもらって、一生懸命擦って、摩擦熱で火を起こすアレをやるのか。
あ、でも、魔力で生み出した木から火を起こしても良いのかな?
ラヴィの腕輪で出した火では、精霊を呼びだすことは出来ないっていう話だったけど。
これについてディーネに聞いてみると、
「ざんねんながら、ダメでち。リアがやどっている、あのおおきなき……あれなら、だいじょうぶでち。でも、リアがだしたきでは、ムリでち」