リアが魔力枯渇を起こしてから数日。
一日一回は泉まで水を汲みに行き、リアの木の魔力を回復させることが日課となった。
ディーネ曰く、リアの木の魔力が順調に回復しているので、余程のことが無い限り、リアが魔力枯渇を起こすことはないそうだ。
それに、そもそもリアが植物を出すのに使う魔力はそれほど多くないようで、あの遺跡の地下にいたアイアン・ドラゴンが、全ての元凶だったらしい。
というわけで、
「カイ先生! 今日のお昼ご飯は、からあげ? それともチキンソテー? ウチは、あのお好み焼きも好きやで!」
リアに小麦粉などを出してもらいながら、今日もラヴィに文字を教えてもらい、俺は精霊語を教える。
まぁ精霊語よりも、料理を覚える方が早いのではないかって程に、ラヴィは俺が作る料理に興味津々のようだけど。
そんな中で、昼食を終えて後片付けをしていると、リアに呼ばれた。
「ねぇねぇ、カイ君。ディーネちゃんから聞いたんだけど……私が魔力枯渇で動けない時に、二回も魔物みたいなのと戦ったって本当?」
「あ……う、うん。緊急事態だったから」
これは……危ないことをするなってお説教かも。
前に弓矢を作って、危ないって怒られたからな。
そんなことを考えていると、リアから意外な言葉が返ってきた。
「そっかぁ。カイ君が私のために……これはもう、いわゆる夫婦だよね! 結婚だよね!」
気付いたら、リアが俺に距離を詰めて来ていて、ぎゅっと抱きしめられる。
待って! これ、顔がリアの胸に埋もれて、息が出来なくなるパターンなんだけどっ!
何とかリアの胸から脱出しようともがいていると、メルの声が聞こえてきた。
「リアさん。それならメルたんが魔力枯渇を起こした時、お兄ちゃんが助けてくれたもん! お兄ちゃんは魔力の制御が苦手なのに、メルたんへ魔力を分けることができて……つまり奇跡が起きたんだもん! 奇跡を起こすほどの愛情を注いでもらったんだから、メルたんがお兄ちゃんのお嫁さんなの!」
メルが助けてくれるのかと思ったら、背後から思いっきり抱きついてくる。
あぁぁぁ、さらに脱出し難くなったぁぁぁっ!
酸素っ! 酸素をぉぉぉっ!
「それを言うなら、カイはいつもボクの一部を吸い込んでいるよ? というか、ボクはカイにとってなくてはならない存在だから、夫婦以上だよね?」
今度はシルフィがやって来たけど……いや、シルフィはそんなキャラじゃないよねっ!? 今こそ、シルフィの風というか、酸素が欲しいんだっ!
「パパは、ディーネのパパでちー!」
うん。そうだね。ディーネの言う通りだから、みんなを離してくれないだろうか。
魔力枯渇どころか、酸素が枯渇して死んじゃうよっ!