「そういえばあまりさ、」
「……っ、うん!」
わたしに話が回ってくることはほとんどない。
それでも、ふたりの会話を聞きながら相槌を打っていたわたしは話を振られたことに嬉しくなり、自分でも思った以上に気合いの入った返事をしてしまった。
その勢いに話しかけてくれたナナちゃんが、ふっと息だけで笑う。
「なんで食い気味。近いよ」
「あ、ごめん……」
視界の端で、瑠衣ちゃんがおもしろくなさそうにしていた。ナナちゃんが自分との会話を終わらせてわたしに話しかけたのが気にくわなかったらしい。
横目で瑠衣ちゃんの動向もうかがいつつ、わたしは「なに?」とナナちゃんに問いかける。ナナちゃんは思い出したように、また少女のようにそっと笑った。
「あまりさ、今日の朝、駅で死にかけたんだって?」
「え、なんでそれを」
「ほんと、あまりって面白いよね。不運体質っていうの? ツイてなさすぎだよ」
「……え、と」
そのことは、学校に着いてから誰にも話していないはずだった。それなのにナナちゃんの口ぶりからして、それはすでに周知の事実らしい。
混乱やなにやらがわたしの脳を一時的にジャックし、お昼ごはんのパンを持つ手が疎かになって離れかける。すんでのところで手に力を込めて、なんとか笑みを浮かべた。
「あ、はは……じつはそうなんだよね」