ルリくんが女性を連れて宿屋に入って来た。
部屋に入って来た彼女は俺とフィリアも睨み付ける。
「それで? どうしたら許してくれるの? ここで脱いだらいいの?」
真っ先にとんでもない事を口走る彼女。
ぬ、脱ぐ!?
……。
……。
えっと…………そっか、一応ここ宿屋だものな。
「こほん、いいえ。そうする必要はありません」
「??」
「俺達が探していたのは二つ、この町の孤児事情を知る者、そして、商売に心得がある者です」
「…………?」
「財布、わざと盗まれるようにしているのですよ?」
「っ!?」
女性は俺を睨む。
「それで? 坊ちゃまはどうしてうちみたいな底辺の孤児にご興味で?」
レボルシオン領の元になっているゲシリアン領も、自由領もそうだったけど、孤児というだけで平民達から白目で見られるくらい、この世界での孤児は不思議と扱いが低い。
「貴方達に一つ、商談があります」
「ふぅん? それなら私ではなく、大人に話を付けるべきだと思うけど?」
「いえ、貴方でいいんです。俺が探しているのは、商売相手ではない…………我々『銀朱の蒼穹』の協力者を探しているのです」
「っ!? ぎ、銀朱の蒼穹!?」
彼女の目が大きくなり、俺達の胸元に目がいく。
俺もフィリアも、後ろに立っていたルリくんも紋章を見せる。
「これで理解してくださいました?」
「ど、どうしてレボルシオン領の革命の英雄がここに!?」
少し興奮した気配が感じられる。
冒険者ギルドでもそうだったけど、『銀朱の蒼穹』は俺が思っていた以上に王国内でも名前が広まっているみたい。
「俺達の事が少し分かる方なら尚話しやすいかも知れません。貴方達のような孤児がレボルシオン領でどういう扱いを受けているのかご存じですか?」
「…………噂だけです。普通の平民以上の『銀朱の蒼穹』の庇護下に入れると聞いた事があります」
「ええ。その通りです」
「っ!? な、なんと……」
隣に立っていたフィリアが手をあげる。
「私も、あなたの後ろにいる彼も、孤児だよ?」
まあ、かく言う俺も孤児みたいなもんではあるんだけど……両親が生活費くらいなら払ってくれていたけど、殆ど会う事もなかったし。
「孤児だから――――という訳ではありません。俺は一緒に『銀朱の蒼穹』を支えてくれる仲間が欲しい。その仲間はいくらいても困りません。これから暫く王都で生活をしますので尚更味方を増やしたいと思いまして、王都の孤児事情に詳しい味方を探して貴方に辿り着いたんです。稀代の闇商人『鴉』さん」
彼女は驚いた表情を浮かべた。
昨晩。
受付嬢セリンさんとの話し合いから帰って来たミリシャさんから、どうやら王都を主軸に裏取引で有名な商人がいるという事を知った。
彼の名前は『鴉』。
素性は全く分からないが、王都の裏の取引では相当凄い人脈を誇っているそうだ。
そして、何故か彼女が孤児である事を教わったミリシャさん。
孤児の情報網を集めれば、強力な協力者と繋がる事が出来ると考えたので、俺達はその人を探そうと考えた。
という事で、まさか『鴉』さんの本人が釣れるとは思わず、驚いてしまった。
彼女が鴉だと気づいた理由は、ルリくんの気配を辿れる所、そして、現在身体中に仕込んでいる暗殺武器がそれを物語っている。
一応、彼女には『鴉』探しをお願いしようとしていたので、『鴉』の名前を出してみると、その表情から本人である事が見て取れた。
「…………まさか、私の裏の顔を探しておられるとは思いもしませんでした。私もまだまだ甘いですね……あなた方が『銀朱の蒼穹』という事に、とても驚いてしまいましたね」
「ははは、天下の『鴉』も人の子という事ですね」
シヤさんは小さく笑みを浮かべる。
「今では知らない者がいない英雄様が、『鴉』にどういう用件ですか?」
「ええ。あなたには――――――俺達『銀朱の蒼穹』の窓口になって貰いたい」
「!? 窓口……ですか?」
「『シュルト』」
「っ!?」
その名に更に驚くシヤさん。
「その名に聞き覚えがありますね?」
「…………どうしてその名を?」
「『シュルト』は俺達『銀朱の蒼穹』です」
「っ!? そ、それは本当ですか!?」
「『鴉』は人の顔色を見ただけでその人の事を分かる程に、交渉が上手だと聞いていますが、今の言葉に噓偽りはありましたか?」
「……いえ、全くありません。本当の事を仰っています」
「ええ。本当の事です。因みに、『シュルト』で唯一姿を現した『シュベスタ』は現在、シヤさんの仲間達を守っております」
一度大きく深呼吸をする彼女。
「シヤさん。俺達は貴方達の味方になりたい。だからこうして『シュルト』である事も明かしています。それは――――『鴉』である貴方だからでもありますが、俺は孤児のみんなの力も欲しい。孤児だからではなく、懸命に生きている人々を俺は応援したい。その為の力が『銀朱の蒼穹』にはあります。シヤさん。ぜひ『銀朱の蒼穹』の一員になって貰えませんか?」
その時、後ろにいたルリくんが口を開いた。
「シヤさん。僕はソラ兄さんをずっと見て来ました。そして、多くの人達を救って来た事も見て来ました。ソラ兄さんが本心から話ているのは、俺が保障してもいいです」
それを聞いたシヤさんは目を瞑った。
部屋に入って来た彼女は俺とフィリアも睨み付ける。
「それで? どうしたら許してくれるの? ここで脱いだらいいの?」
真っ先にとんでもない事を口走る彼女。
ぬ、脱ぐ!?
……。
……。
えっと…………そっか、一応ここ宿屋だものな。
「こほん、いいえ。そうする必要はありません」
「??」
「俺達が探していたのは二つ、この町の孤児事情を知る者、そして、商売に心得がある者です」
「…………?」
「財布、わざと盗まれるようにしているのですよ?」
「っ!?」
女性は俺を睨む。
「それで? 坊ちゃまはどうしてうちみたいな底辺の孤児にご興味で?」
レボルシオン領の元になっているゲシリアン領も、自由領もそうだったけど、孤児というだけで平民達から白目で見られるくらい、この世界での孤児は不思議と扱いが低い。
「貴方達に一つ、商談があります」
「ふぅん? それなら私ではなく、大人に話を付けるべきだと思うけど?」
「いえ、貴方でいいんです。俺が探しているのは、商売相手ではない…………我々『銀朱の蒼穹』の協力者を探しているのです」
「っ!? ぎ、銀朱の蒼穹!?」
彼女の目が大きくなり、俺達の胸元に目がいく。
俺もフィリアも、後ろに立っていたルリくんも紋章を見せる。
「これで理解してくださいました?」
「ど、どうしてレボルシオン領の革命の英雄がここに!?」
少し興奮した気配が感じられる。
冒険者ギルドでもそうだったけど、『銀朱の蒼穹』は俺が思っていた以上に王国内でも名前が広まっているみたい。
「俺達の事が少し分かる方なら尚話しやすいかも知れません。貴方達のような孤児がレボルシオン領でどういう扱いを受けているのかご存じですか?」
「…………噂だけです。普通の平民以上の『銀朱の蒼穹』の庇護下に入れると聞いた事があります」
「ええ。その通りです」
「っ!? な、なんと……」
隣に立っていたフィリアが手をあげる。
「私も、あなたの後ろにいる彼も、孤児だよ?」
まあ、かく言う俺も孤児みたいなもんではあるんだけど……両親が生活費くらいなら払ってくれていたけど、殆ど会う事もなかったし。
「孤児だから――――という訳ではありません。俺は一緒に『銀朱の蒼穹』を支えてくれる仲間が欲しい。その仲間はいくらいても困りません。これから暫く王都で生活をしますので尚更味方を増やしたいと思いまして、王都の孤児事情に詳しい味方を探して貴方に辿り着いたんです。稀代の闇商人『鴉』さん」
彼女は驚いた表情を浮かべた。
昨晩。
受付嬢セリンさんとの話し合いから帰って来たミリシャさんから、どうやら王都を主軸に裏取引で有名な商人がいるという事を知った。
彼の名前は『鴉』。
素性は全く分からないが、王都の裏の取引では相当凄い人脈を誇っているそうだ。
そして、何故か彼女が孤児である事を教わったミリシャさん。
孤児の情報網を集めれば、強力な協力者と繋がる事が出来ると考えたので、俺達はその人を探そうと考えた。
という事で、まさか『鴉』さんの本人が釣れるとは思わず、驚いてしまった。
彼女が鴉だと気づいた理由は、ルリくんの気配を辿れる所、そして、現在身体中に仕込んでいる暗殺武器がそれを物語っている。
一応、彼女には『鴉』探しをお願いしようとしていたので、『鴉』の名前を出してみると、その表情から本人である事が見て取れた。
「…………まさか、私の裏の顔を探しておられるとは思いもしませんでした。私もまだまだ甘いですね……あなた方が『銀朱の蒼穹』という事に、とても驚いてしまいましたね」
「ははは、天下の『鴉』も人の子という事ですね」
シヤさんは小さく笑みを浮かべる。
「今では知らない者がいない英雄様が、『鴉』にどういう用件ですか?」
「ええ。あなたには――――――俺達『銀朱の蒼穹』の窓口になって貰いたい」
「!? 窓口……ですか?」
「『シュルト』」
「っ!?」
その名に更に驚くシヤさん。
「その名に聞き覚えがありますね?」
「…………どうしてその名を?」
「『シュルト』は俺達『銀朱の蒼穹』です」
「っ!? そ、それは本当ですか!?」
「『鴉』は人の顔色を見ただけでその人の事を分かる程に、交渉が上手だと聞いていますが、今の言葉に噓偽りはありましたか?」
「……いえ、全くありません。本当の事を仰っています」
「ええ。本当の事です。因みに、『シュルト』で唯一姿を現した『シュベスタ』は現在、シヤさんの仲間達を守っております」
一度大きく深呼吸をする彼女。
「シヤさん。俺達は貴方達の味方になりたい。だからこうして『シュルト』である事も明かしています。それは――――『鴉』である貴方だからでもありますが、俺は孤児のみんなの力も欲しい。孤児だからではなく、懸命に生きている人々を俺は応援したい。その為の力が『銀朱の蒼穹』にはあります。シヤさん。ぜひ『銀朱の蒼穹』の一員になって貰えませんか?」
その時、後ろにいたルリくんが口を開いた。
「シヤさん。僕はソラ兄さんをずっと見て来ました。そして、多くの人達を救って来た事も見て来ました。ソラ兄さんが本心から話ているのは、俺が保障してもいいです」
それを聞いたシヤさんは目を瞑った。