カシアさんを始めとする獣人達が、エホイ町の住民達に謝罪した。
住民達も彼女達の境遇を何となく察していたらしくて、全く気にしていないと話した。
更には、迫害されてない事もあって、レボルシオン領の代表となっている俺に「どうか、獣人の皆様を許してあげてください」と言う程だった。
それには多くの獣人達が涙していた。
しかし、エホイ町も決して裕福な町ではない。
このまま獣人達が居座っても、食事が困る事だろう。
そこで、彼女達をゲスロン街に誘うと、喜んで付いて来てくれた。
ゲスロン街に帰る二日間、まさか獣人達はそのまま走って俺達を追いかけてきた。
馬車を呼ぶと言ったけど、自由に走れる足があると、楽しそうに走って来てくれた。
獣人達の高い身体能力には凄く驚きだ。
二日掛けてゲスロン街に戻ると、冒険者ギルドのギルドマスターのエイロンさんが出迎えてくれた。
事情を説明すると、ゲスロン街の西にあるゲシリアン平原から名を変えたレボルシオン平原なら、いくらでも肉が取れるから食料はそこで何とでもなるとアドバイスをくれた。
これは帰り道、ミリシャさんからも言われた事だ。
それと、街の住民達から、街の名前を変えたいと申し出があった。
レボルシオン領から名前を取り『レボル街』と命名してくださいと多くの住民達から詰め掛けられたので、俺としても元々のゲシリアン子爵の雰囲気が残っていた街の名が気になっていたから、変更を了承した。
これによって、レボルシオン領の中心市として『レボル街』が誕生した。
そして、その日を『改名の日』として毎年お祭りにする事が決まった。
その日は、腕に自慢がある料理人達がただで屋台を開く日となった。
全ての資金は『銀朱の蒼穹』から出資する事に決めた。そもそもこのままでは、ひたすら資金が貯まるばかりで使い道がなかったのもあるからね。
それほどゲシリアン子爵はこの資金を使って私利私欲にまみれていたという事だろう。
獣人達の住処はこれから作るので、それまでは『銀朱の蒼穹』の屋敷で寝泊まりさせる事にした。
屋敷に帰ると、シスターグロリアの案により、何故かメイド隊が結成されていた。
たったの一週間でメイドとしての教育を受けたようで、メイド隊となった六歳から九歳の女の子達が可愛らしい制服を着て出迎えてくれた。
「「「「お帰りなさいませ! ご主人様!」」」」
「ご主人様はやめて!!」
「ソラ……? これはどういう事かしら? ご主人様って何の事かな?」
こうなると思ったよ!
フィリアに問い詰められたのである。
その日の夕飯。
獣人達も一緒に食事を取る事にした。
人数が多いので、もはや宴会状態である。
そんな中、メイド服を着た可愛らしいルナちゃんと、相変わらず俯いているルリくんが見えた。
「やあ、ルナちゃん。制服とても似合ってるよ」
「ほんと!? えへへ、ソラお兄ちゃんに褒められた~」
笑顔のルナちゃんの頭を優しく撫でてあげる。
一瞬、俺の顔を覗いたルリくんだったが、すぐにまた俯いてしまった。
出来ればルリくんにも笑っていて欲しいんだけど、どうもこういうのは苦手らしい。
その日は夜まで騒がしかった。
それから数日が過ぎた。
今ではすっかりなじんだ獣人達は、レボル街の住民達とも仲良くなっていた。
獣人達は誰一人怠ける事なく、毎日のようにレボルシオン平原から多くのお肉を取って来てくれた。
そのお肉は冒険者ギルドを通じて、多くの住民達に渡るのだ。
そして、獣人族が来てから十日目となった。
「ではこちらが十日間集めたお金になる」
カシアさんが俺の前に大きな袋を置いた。
「へ? 何のお金ですか?」
「この十日間、私達が得た報酬だ」
「え?? 何故その報酬を私に?」
「……? こうして十日に一度、まとめた報酬を渡すのではないのか?」
「報酬を渡す……? えっと……?」
俺とカシアさんの噛み合わない会話にミリシャさんが割り込んで来た。
「はいはい。二人とも一旦止まってね。ソラくん」
「はい」
「それは恐らく、カシアちゃん達が奴隷時代にやっていた事なのかも知れないね。カシアちゃん。向こうでは十日間得た報酬を纏めてご主人様に献上していたんでしょう?」
「うむ。その通りだ」
「はい。ソラくん。そういう事だそうです」
……。
……。
……。
「いやいやいやいや! 俺はご主人様でも何でもないですし、カシアさんは奴隷じゃないですよ? この報酬は、皆さんの分ですからね?」
「いやいやいやいや、報酬と言われても……? 私達はソラくんの元で働いているので、この報酬はソラくんに渡すべきだと思う」
どうやらカシアさんはここで暮らしている事に、大きな恩義を感じている節がある。
だから報酬も全部渡そうとしているんだろうね。
「いいですか! カシアさん! このお金はカシアさん達が一生懸命に働いて稼いだお金です。これは俺ではなく、皆さんが働いて得られた報酬です。ですので、この報酬は皆さんの物ですし、皆さんの自分自身の為に使ってください。分かりましたね?」
その事を聞いた獣人達は顔色が真っ青に変わる。
え? みんなどうしたの?
「ま、まさか……我々はもう用済みで、ここから出て行けと……」
「そんな事言ってないですよ!! ここに住みたいならそのまま住んでいいですよ? 皆さんが一生懸命に働いてくれて、レボル街の食料事情が、ひいてはレボルシオン領内の食料事情がだいぶ良くなってますから、領主ではありませんが、代表として感謝していますから、皆さんが住みたい場所が見つかるまでずっと居てくれていいんですからね?」
「だ、だが……我々はソラくんに何を払わず、ここに住むなんてことに……」
確かに、ある意味ただ食い状態ではあるよね。ある意味ただ食いではないんだけどね。
その時、ミリシャさんがクスッと笑って手をあげた。
「はいはい! それなら、獣人の皆さんには『銀朱の蒼穹』の傘下組織になってくれたらいいと思います!」
「傘下組織……?」
「うん! 実はソラくんは事情があって、お金より『経験値』の方が欲しいの。だからみんなはこれからソラくんに『経験値』を払ってここに住んだらどうかな? ただし、レベルが常に1に戻るけどね」
「なっ!? それはソラくんの為になるのか!?」
「ええ。ソラくんに取って一番の為になる事だよ?」
「!!! ぜひ、ぜひ! やらせてくれ!」
ミリシャさんは、やってやったぞ的な笑みを浮かべ、獣人達を集めて何かを吹き込んでいた。
何故か周りのメイド達も混ざって、一緒に説明を聞いている。
そこにルナちゃんも入っていて、意外にもルリくんも目を輝かせて聞いていた。
住民達も彼女達の境遇を何となく察していたらしくて、全く気にしていないと話した。
更には、迫害されてない事もあって、レボルシオン領の代表となっている俺に「どうか、獣人の皆様を許してあげてください」と言う程だった。
それには多くの獣人達が涙していた。
しかし、エホイ町も決して裕福な町ではない。
このまま獣人達が居座っても、食事が困る事だろう。
そこで、彼女達をゲスロン街に誘うと、喜んで付いて来てくれた。
ゲスロン街に帰る二日間、まさか獣人達はそのまま走って俺達を追いかけてきた。
馬車を呼ぶと言ったけど、自由に走れる足があると、楽しそうに走って来てくれた。
獣人達の高い身体能力には凄く驚きだ。
二日掛けてゲスロン街に戻ると、冒険者ギルドのギルドマスターのエイロンさんが出迎えてくれた。
事情を説明すると、ゲスロン街の西にあるゲシリアン平原から名を変えたレボルシオン平原なら、いくらでも肉が取れるから食料はそこで何とでもなるとアドバイスをくれた。
これは帰り道、ミリシャさんからも言われた事だ。
それと、街の住民達から、街の名前を変えたいと申し出があった。
レボルシオン領から名前を取り『レボル街』と命名してくださいと多くの住民達から詰め掛けられたので、俺としても元々のゲシリアン子爵の雰囲気が残っていた街の名が気になっていたから、変更を了承した。
これによって、レボルシオン領の中心市として『レボル街』が誕生した。
そして、その日を『改名の日』として毎年お祭りにする事が決まった。
その日は、腕に自慢がある料理人達がただで屋台を開く日となった。
全ての資金は『銀朱の蒼穹』から出資する事に決めた。そもそもこのままでは、ひたすら資金が貯まるばかりで使い道がなかったのもあるからね。
それほどゲシリアン子爵はこの資金を使って私利私欲にまみれていたという事だろう。
獣人達の住処はこれから作るので、それまでは『銀朱の蒼穹』の屋敷で寝泊まりさせる事にした。
屋敷に帰ると、シスターグロリアの案により、何故かメイド隊が結成されていた。
たったの一週間でメイドとしての教育を受けたようで、メイド隊となった六歳から九歳の女の子達が可愛らしい制服を着て出迎えてくれた。
「「「「お帰りなさいませ! ご主人様!」」」」
「ご主人様はやめて!!」
「ソラ……? これはどういう事かしら? ご主人様って何の事かな?」
こうなると思ったよ!
フィリアに問い詰められたのである。
その日の夕飯。
獣人達も一緒に食事を取る事にした。
人数が多いので、もはや宴会状態である。
そんな中、メイド服を着た可愛らしいルナちゃんと、相変わらず俯いているルリくんが見えた。
「やあ、ルナちゃん。制服とても似合ってるよ」
「ほんと!? えへへ、ソラお兄ちゃんに褒められた~」
笑顔のルナちゃんの頭を優しく撫でてあげる。
一瞬、俺の顔を覗いたルリくんだったが、すぐにまた俯いてしまった。
出来ればルリくんにも笑っていて欲しいんだけど、どうもこういうのは苦手らしい。
その日は夜まで騒がしかった。
それから数日が過ぎた。
今ではすっかりなじんだ獣人達は、レボル街の住民達とも仲良くなっていた。
獣人達は誰一人怠ける事なく、毎日のようにレボルシオン平原から多くのお肉を取って来てくれた。
そのお肉は冒険者ギルドを通じて、多くの住民達に渡るのだ。
そして、獣人族が来てから十日目となった。
「ではこちらが十日間集めたお金になる」
カシアさんが俺の前に大きな袋を置いた。
「へ? 何のお金ですか?」
「この十日間、私達が得た報酬だ」
「え?? 何故その報酬を私に?」
「……? こうして十日に一度、まとめた報酬を渡すのではないのか?」
「報酬を渡す……? えっと……?」
俺とカシアさんの噛み合わない会話にミリシャさんが割り込んで来た。
「はいはい。二人とも一旦止まってね。ソラくん」
「はい」
「それは恐らく、カシアちゃん達が奴隷時代にやっていた事なのかも知れないね。カシアちゃん。向こうでは十日間得た報酬を纏めてご主人様に献上していたんでしょう?」
「うむ。その通りだ」
「はい。ソラくん。そういう事だそうです」
……。
……。
……。
「いやいやいやいや! 俺はご主人様でも何でもないですし、カシアさんは奴隷じゃないですよ? この報酬は、皆さんの分ですからね?」
「いやいやいやいや、報酬と言われても……? 私達はソラくんの元で働いているので、この報酬はソラくんに渡すべきだと思う」
どうやらカシアさんはここで暮らしている事に、大きな恩義を感じている節がある。
だから報酬も全部渡そうとしているんだろうね。
「いいですか! カシアさん! このお金はカシアさん達が一生懸命に働いて稼いだお金です。これは俺ではなく、皆さんが働いて得られた報酬です。ですので、この報酬は皆さんの物ですし、皆さんの自分自身の為に使ってください。分かりましたね?」
その事を聞いた獣人達は顔色が真っ青に変わる。
え? みんなどうしたの?
「ま、まさか……我々はもう用済みで、ここから出て行けと……」
「そんな事言ってないですよ!! ここに住みたいならそのまま住んでいいですよ? 皆さんが一生懸命に働いてくれて、レボル街の食料事情が、ひいてはレボルシオン領内の食料事情がだいぶ良くなってますから、領主ではありませんが、代表として感謝していますから、皆さんが住みたい場所が見つかるまでずっと居てくれていいんですからね?」
「だ、だが……我々はソラくんに何を払わず、ここに住むなんてことに……」
確かに、ある意味ただ食い状態ではあるよね。ある意味ただ食いではないんだけどね。
その時、ミリシャさんがクスッと笑って手をあげた。
「はいはい! それなら、獣人の皆さんには『銀朱の蒼穹』の傘下組織になってくれたらいいと思います!」
「傘下組織……?」
「うん! 実はソラくんは事情があって、お金より『経験値』の方が欲しいの。だからみんなはこれからソラくんに『経験値』を払ってここに住んだらどうかな? ただし、レベルが常に1に戻るけどね」
「なっ!? それはソラくんの為になるのか!?」
「ええ。ソラくんに取って一番の為になる事だよ?」
「!!! ぜひ、ぜひ! やらせてくれ!」
ミリシャさんは、やってやったぞ的な笑みを浮かべ、獣人達を集めて何かを吹き込んでいた。
何故か周りのメイド達も混ざって、一緒に説明を聞いている。
そこにルナちゃんも入っていて、意外にもルリくんも目を輝かせて聞いていた。