俺はパンを恵んであげた彼女に頼み、彼女達の住処に案内して貰った。
ボロボロの建物に総勢三十人の子供達が住んでいるとの事だ。
中でも一番年上の女の子がメイリちゃんで俺と同じ十一歳。
他に年下に男の子が十六人、女の子が十三人いた。
案の定、孤児達らしいけど、恐らく中にはゲシリアン子爵の魔の手で孤児となった子も多いと予想される。
俺は彼女達に集まって貰った。
「こほん。俺の名はソラ。新生クラン『銀朱の蒼穹』のマスターをしている」
俺の言葉を聞くと、事情をある程度知っていそうなメイリちゃんと三人の十歳の子の顔が真っ青に変わる。
そして、
「こ、これは大変申し訳ございませんでした!! ど、どうか、ぶ、無礼をお許しください!! な、なんでもしますから、うちの子達だけはどうか許してくださいませ!」
メイリちゃんが俺の前に土下座して謝り始めた。
更にその姿を見た子供達も、ただ事ではない事に気づき、その場で土下座し謝り始めた。
この世界で、冒険者として名をあげ、クランに所属する事は、もはや貴族に等しい権力を持つ。
更にはそのマスターともなれば、歳関係なくその功績から頭を下げる人も多い。
メイリちゃんはきっとそういう事も知っていたのだろう。
だから俺達みたいな子供達がクランに所属しているはずがないと、声をかけてきたのかも知れない。
「みんな、謝らないでくれ。俺は別に君たちを卑しめるために、ここに来た訳ではないんだ。だからみんな頭をあげてほしい」
そう話すと、みんなが恐る恐る俺の顔を覗く。
ぱーっと笑ってあげて、召喚獣のラビちゃんを前に出すと、みんなの警戒心が段々薄れ、次第に笑顔になってくれた。
「よし、これでみんなも落ち着いたね? メイリちゃんを代表にみんなと話がしたい。いいかい?」
「はい!」
他の子達も頷く。
まだ幼いというのに、この子達の絆は深いように見える。
「まず聞きたいけど、昨日渡したパンは二つだけだよね? 沢山食べれたというのは?」
「ご、ごめんなさい……普段ならあんなに美味しいパンを食べる事は出来ないんです。だから昨日はみんなで分けて食べたんです。おかげで久々に温かいパンを食べれて嬉しかったんです!」
「……でもそれでは沢山食べれた事にはならないだろう?」
「は、はい……ご、ごめんなさい……嘘を……付きました」
「「「「ごめんなさい!」」」」
後ろの子達も一斉に謝罪する。
「うん! ちゃんと謝れるのはいいことだね。俺もまさか、こんなに沢山いるとは思わず、パンをたった二つしか渡さなかったからね」
少し驚く表情をするメイリちゃん。
その時、ミリシャさんが一歩前に出る。
そして、手に持っていた大きな鞄を開いた。
中には美味しそうなパンが沢山入っている。
「さあ、これはソラ兄ちゃんからのプレゼントだよ! 今日だけだけど、沢山食べてね?」
「え!? ミリシャさん!? いつの間に!?」
後ろを見たミリシャさんが片目を瞑り、親指を立てる。
もしかして、こうなる事を予測して?
ミリシャさんが持ってきたパンを全員に渡す。
誰一人、先に食べる子がいないことに驚いた。
全員に渡り、俺に向かって「食べてもいいの?」視線を送る子供達に、少し苦笑いしつつ、「みんな食べていいよ!」と話すと、とても美味しそうに食べ始めた。
一番前で食べているメイリちゃんの頬には、大きな涙が落ちていた。
◇
「「「「ごちそうさまでした!!」」」」
持ってきたパンと水を食べ終えた子供達。
「では、それを食べてくれた所で、一つ聞きたいんだけど、みんなは孤児であってるのかな?」
代表してメイリちゃんが答える。
「はい、他の町から捨てられた子が殆どなんです……」
「そうか。因みに大人がいない理由を聞いても?」
「…………シスターが一人いたんですけど……貴族様に連れて行かれました……」
「……そうか。それ以来、君たちは自分たちの力だけでここまで生き延びたのね?」
「はい。私でも出来る仕事をお願いして頑張ってきたんですけど……うちの町の仕事もどんどん無くなって……もう働く事も出来ずに……」
悲しそうに涙を流すメイリちゃん。
本当はああいう物乞いじゃなく、ちゃんと働いてみんなの食事を用意したかったに違いないね。
「わかった。ただ……悲しい事にこのままでは君たちは飢え死にするかも知れない。物乞いができるほど、この町は大きくないし、町の状況も良くないからね」
メイリちゃんだけはその現状を一番理解しているようで、大きく頷いて同意した。
「それで、俺から一つ提案をしたい。それを君達でよくよく考えて結論を出して欲しい。決して簡単な事じゃないからね」
少し不安そうな表情の子供達の前で、俺は告げた。
「これから俺のクラン『銀朱の蒼穹』の傘下の組織となり、俺に経験値を捧げる仕事を頼みたい。代わりに、俺からは力を与える。その力で君達は自分の足で生きて行く事が出来るが、俺は決して君達に援助はしない。最初の戦い方や装備の援助をしたら、俺からはもう君達に手は差し伸べられない。後は自分達で切り開いていかないといけない。これが俺が出す条件だよ。今日一日考える時間をあげる。明日俺はこの町を発つ。もし俺の提案を受けるなら、全員で馬車乗り場まで来てくれ」
俺は彼女達に提案をして、その場を後にした。
ボロボロの建物に総勢三十人の子供達が住んでいるとの事だ。
中でも一番年上の女の子がメイリちゃんで俺と同じ十一歳。
他に年下に男の子が十六人、女の子が十三人いた。
案の定、孤児達らしいけど、恐らく中にはゲシリアン子爵の魔の手で孤児となった子も多いと予想される。
俺は彼女達に集まって貰った。
「こほん。俺の名はソラ。新生クラン『銀朱の蒼穹』のマスターをしている」
俺の言葉を聞くと、事情をある程度知っていそうなメイリちゃんと三人の十歳の子の顔が真っ青に変わる。
そして、
「こ、これは大変申し訳ございませんでした!! ど、どうか、ぶ、無礼をお許しください!! な、なんでもしますから、うちの子達だけはどうか許してくださいませ!」
メイリちゃんが俺の前に土下座して謝り始めた。
更にその姿を見た子供達も、ただ事ではない事に気づき、その場で土下座し謝り始めた。
この世界で、冒険者として名をあげ、クランに所属する事は、もはや貴族に等しい権力を持つ。
更にはそのマスターともなれば、歳関係なくその功績から頭を下げる人も多い。
メイリちゃんはきっとそういう事も知っていたのだろう。
だから俺達みたいな子供達がクランに所属しているはずがないと、声をかけてきたのかも知れない。
「みんな、謝らないでくれ。俺は別に君たちを卑しめるために、ここに来た訳ではないんだ。だからみんな頭をあげてほしい」
そう話すと、みんなが恐る恐る俺の顔を覗く。
ぱーっと笑ってあげて、召喚獣のラビちゃんを前に出すと、みんなの警戒心が段々薄れ、次第に笑顔になってくれた。
「よし、これでみんなも落ち着いたね? メイリちゃんを代表にみんなと話がしたい。いいかい?」
「はい!」
他の子達も頷く。
まだ幼いというのに、この子達の絆は深いように見える。
「まず聞きたいけど、昨日渡したパンは二つだけだよね? 沢山食べれたというのは?」
「ご、ごめんなさい……普段ならあんなに美味しいパンを食べる事は出来ないんです。だから昨日はみんなで分けて食べたんです。おかげで久々に温かいパンを食べれて嬉しかったんです!」
「……でもそれでは沢山食べれた事にはならないだろう?」
「は、はい……ご、ごめんなさい……嘘を……付きました」
「「「「ごめんなさい!」」」」
後ろの子達も一斉に謝罪する。
「うん! ちゃんと謝れるのはいいことだね。俺もまさか、こんなに沢山いるとは思わず、パンをたった二つしか渡さなかったからね」
少し驚く表情をするメイリちゃん。
その時、ミリシャさんが一歩前に出る。
そして、手に持っていた大きな鞄を開いた。
中には美味しそうなパンが沢山入っている。
「さあ、これはソラ兄ちゃんからのプレゼントだよ! 今日だけだけど、沢山食べてね?」
「え!? ミリシャさん!? いつの間に!?」
後ろを見たミリシャさんが片目を瞑り、親指を立てる。
もしかして、こうなる事を予測して?
ミリシャさんが持ってきたパンを全員に渡す。
誰一人、先に食べる子がいないことに驚いた。
全員に渡り、俺に向かって「食べてもいいの?」視線を送る子供達に、少し苦笑いしつつ、「みんな食べていいよ!」と話すと、とても美味しそうに食べ始めた。
一番前で食べているメイリちゃんの頬には、大きな涙が落ちていた。
◇
「「「「ごちそうさまでした!!」」」」
持ってきたパンと水を食べ終えた子供達。
「では、それを食べてくれた所で、一つ聞きたいんだけど、みんなは孤児であってるのかな?」
代表してメイリちゃんが答える。
「はい、他の町から捨てられた子が殆どなんです……」
「そうか。因みに大人がいない理由を聞いても?」
「…………シスターが一人いたんですけど……貴族様に連れて行かれました……」
「……そうか。それ以来、君たちは自分たちの力だけでここまで生き延びたのね?」
「はい。私でも出来る仕事をお願いして頑張ってきたんですけど……うちの町の仕事もどんどん無くなって……もう働く事も出来ずに……」
悲しそうに涙を流すメイリちゃん。
本当はああいう物乞いじゃなく、ちゃんと働いてみんなの食事を用意したかったに違いないね。
「わかった。ただ……悲しい事にこのままでは君たちは飢え死にするかも知れない。物乞いができるほど、この町は大きくないし、町の状況も良くないからね」
メイリちゃんだけはその現状を一番理解しているようで、大きく頷いて同意した。
「それで、俺から一つ提案をしたい。それを君達でよくよく考えて結論を出して欲しい。決して簡単な事じゃないからね」
少し不安そうな表情の子供達の前で、俺は告げた。
「これから俺のクラン『銀朱の蒼穹』の傘下の組織となり、俺に経験値を捧げる仕事を頼みたい。代わりに、俺からは力を与える。その力で君達は自分の足で生きて行く事が出来るが、俺は決して君達に援助はしない。最初の戦い方や装備の援助をしたら、俺からはもう君達に手は差し伸べられない。後は自分達で切り開いていかないといけない。これが俺が出す条件だよ。今日一日考える時間をあげる。明日俺はこの町を発つ。もし俺の提案を受けるなら、全員で馬車乗り場まで来てくれ」
俺は彼女達に提案をして、その場を後にした。