僕が初めて転職を行ってから三日が経った。
三日間、フィリアやカール達は狩りに勤しんでいた。
俺はというと…………何もしていない。
街をぶらぶら歩いていたりしている。
これでもまだ落ちぶれるつもりはないんだ。
だから、冒険者ギルドに出入りする事にした。
十歳から冒険者ギルドに出入りしても、誰も文句を言わない。
『転職士』の俺は冒険者にはなれないが、どんな職能があって、どんな職能が人気で、パーティーはどんな構成なのか、そういうモノを調べ始めた。
そして、本日。
フィリアとアムダさん、イロラさんが訪ねて来てくれた。
どうやら報告があるらしい。
「ソラ、少しお願いがあるんだけどいいかな?」
「ん? どうしたんだ?」
珍しくフィリアが頼みモードになっている。
「またアムダさん達の職能を転職して欲しいんだけど、いいかな?」
「え? いいけど……別な職能を試すのか?」
「ん~、そんなとこ」
「ああ、まぁいいよ。疲れるとかも全くないから」
「そっか! それなら早速お願いね」
「おう」
またもや先輩の二人の転職を行う。
「今度はどんな職能にしますか?」
「えっとね……『狩人』でお願い」
「え?」
思っていた答えとは違う答えに、驚いてしまった。
「『狩人』から『狩人』に??」
「え、ええ」
「????」
後ろにいたフィリアが目を光らせて前に出てきた。
「ソラ、一度やってみて欲しいの」
「え? …………まあいっか、分かった」
俺は言われるがまま、アムダさんの職能を『狩人』から『狩人』に変えた。
意外にもちゃんと『狩人』から『狩人』に変わった事が確認できた。
「意外にも転職出来るもんだな…………でもこれで無駄にレベルがまた1に戻ったんじゃ……?」
「えっと、うん。ちゃんとレベルが1に戻ってるよ!」
そりゃそうだよね!?
転職したらレベルが1になるに決まってるじゃん……。
「ソラ、イロラ姉さんの分もお願い」
「えっ? イロラさんも?」
イロラさんが俺を見て、大きく頷いて両手を前に出した。
「でもレベルが1になるんだよ!?」
「いいの。ちゃんとやって欲しい」
「…………もう、訳が分からないよ……はぁ…………」
仕方なくイロラさんの職能も『狩人』に転職させた……元通りなんだけどね……。
「うん。ちゃんとレベル1だよ~」
「アムダ姉さん、イロラ姉さんありがとう!」
「いいえ~、それでソラはどうなの?」
「え? 俺?」
三人が興味津々な目で俺を見つめてきた。
「ど、どういう事?」
「えっとね、職能っていうのは、魔物を倒して経験値を貯めてレベルを上げる。までは分かるね?」
「え? ええ、それくらい分かるよ」
「でもね。もう一つレベルを上げる方法があるのは知ってる?」
「もう一つ…………確か、職能のスキルを使い続ける事?」
世界の常識の一つ。
職能が大きく人生に関わるこの世界での常識。それはレベルを上げる方法である。
手っ取り早い方法は魔物を倒す事だ。
強い魔物を倒せば、より多くの経験値が貯まる。
しかし、これだと魔物を倒せない者なら一生経験値を貯める方法がないのだ。
そんな人々にも経験値を貯める方法が用意されている。
それが職能のスキルを使い続ける事である。
ただ、『無職』だけはスキルがないからレベルを上げる方法がない。魔物を倒すなんて夢のまた夢である。
「でも、『転職士』のレベルって……スキルを使い続けても上がらないんじゃ……?」
実は『転職士』がハズレ職能である最も大きな理由。
『無職』同率の低ステータス、戦闘スキルなし、唯一スキル『下級職能転職』があるのだが、その『下級職能転職』を使い続けてもレベルが一切上がらないと言われている。
「そう言われているのは、『無職』を『転職』させた場合じゃないのかなと思ったの。それもレベル1で経験値0の人だからじゃないのかなって」
フィリアの言葉に、俺の心に大きな電気のようなモノが流れた。
「え? で、でも……」
「ソラ、今の経験値が貯まってる感じ……する?」
フィリアの言葉通り、俺の中に経験値が貯まったような感覚があった。
ほんの少し、これがどれくらいで、レベルが上がるにはどれくらいかかるのか分からないけれど……たった1かも知れないけど、ちゃんと経験値が貯まった感覚があった。
「あ、ああ…………ほんの少しだけど……ちゃんと…………」
俺はまたもや涙を流した。
◇
あれからフィリア引率のアムダさんとイロラさんのレベルを上げては、転職させて俺の『転職士』のレベルを上げる事を目指した。
アムダさん達には本当に申し訳なかったのだけれど、今まで『無職』だったから狩りすら出来なかった。でも、今は狩りが出来ると言われた。
レベルは毎日1に戻るけれど、魔物の素材が獲得出来るのは今までの生活と比べて全然違うとの事だ。
本来『転職』するにも、大量の料金を取る人が殆どだ。たまにしか仕事がないので、一回の転職でその分を取り戻そうとしている転職士が殆どで、価格が高騰しているのだ。
……それに他人が羽ばたくのが、羨ましく思えるに違いない。
毎日経験値を上げて貰う生活も一か月が経った。
――――そして。
- 職能『転職士』のレベルが2に上がりました。-
- 新たにスキル『経験値アップ①』を獲得しました。-
- 新たにスキル『同職転職』を獲得しました。-
『経験値アップ①』
転職させた相手の獲得経験値を二倍にする。
スキル効果の付与は任意で選択可能。
『同職転職』
相手の職能をそのままにレベルを1に戻す。
経験値吸収率が通常転職より高い。(通常転職1/100、同職転職1/50)
三日間、フィリアやカール達は狩りに勤しんでいた。
俺はというと…………何もしていない。
街をぶらぶら歩いていたりしている。
これでもまだ落ちぶれるつもりはないんだ。
だから、冒険者ギルドに出入りする事にした。
十歳から冒険者ギルドに出入りしても、誰も文句を言わない。
『転職士』の俺は冒険者にはなれないが、どんな職能があって、どんな職能が人気で、パーティーはどんな構成なのか、そういうモノを調べ始めた。
そして、本日。
フィリアとアムダさん、イロラさんが訪ねて来てくれた。
どうやら報告があるらしい。
「ソラ、少しお願いがあるんだけどいいかな?」
「ん? どうしたんだ?」
珍しくフィリアが頼みモードになっている。
「またアムダさん達の職能を転職して欲しいんだけど、いいかな?」
「え? いいけど……別な職能を試すのか?」
「ん~、そんなとこ」
「ああ、まぁいいよ。疲れるとかも全くないから」
「そっか! それなら早速お願いね」
「おう」
またもや先輩の二人の転職を行う。
「今度はどんな職能にしますか?」
「えっとね……『狩人』でお願い」
「え?」
思っていた答えとは違う答えに、驚いてしまった。
「『狩人』から『狩人』に??」
「え、ええ」
「????」
後ろにいたフィリアが目を光らせて前に出てきた。
「ソラ、一度やってみて欲しいの」
「え? …………まあいっか、分かった」
俺は言われるがまま、アムダさんの職能を『狩人』から『狩人』に変えた。
意外にもちゃんと『狩人』から『狩人』に変わった事が確認できた。
「意外にも転職出来るもんだな…………でもこれで無駄にレベルがまた1に戻ったんじゃ……?」
「えっと、うん。ちゃんとレベルが1に戻ってるよ!」
そりゃそうだよね!?
転職したらレベルが1になるに決まってるじゃん……。
「ソラ、イロラ姉さんの分もお願い」
「えっ? イロラさんも?」
イロラさんが俺を見て、大きく頷いて両手を前に出した。
「でもレベルが1になるんだよ!?」
「いいの。ちゃんとやって欲しい」
「…………もう、訳が分からないよ……はぁ…………」
仕方なくイロラさんの職能も『狩人』に転職させた……元通りなんだけどね……。
「うん。ちゃんとレベル1だよ~」
「アムダ姉さん、イロラ姉さんありがとう!」
「いいえ~、それでソラはどうなの?」
「え? 俺?」
三人が興味津々な目で俺を見つめてきた。
「ど、どういう事?」
「えっとね、職能っていうのは、魔物を倒して経験値を貯めてレベルを上げる。までは分かるね?」
「え? ええ、それくらい分かるよ」
「でもね。もう一つレベルを上げる方法があるのは知ってる?」
「もう一つ…………確か、職能のスキルを使い続ける事?」
世界の常識の一つ。
職能が大きく人生に関わるこの世界での常識。それはレベルを上げる方法である。
手っ取り早い方法は魔物を倒す事だ。
強い魔物を倒せば、より多くの経験値が貯まる。
しかし、これだと魔物を倒せない者なら一生経験値を貯める方法がないのだ。
そんな人々にも経験値を貯める方法が用意されている。
それが職能のスキルを使い続ける事である。
ただ、『無職』だけはスキルがないからレベルを上げる方法がない。魔物を倒すなんて夢のまた夢である。
「でも、『転職士』のレベルって……スキルを使い続けても上がらないんじゃ……?」
実は『転職士』がハズレ職能である最も大きな理由。
『無職』同率の低ステータス、戦闘スキルなし、唯一スキル『下級職能転職』があるのだが、その『下級職能転職』を使い続けてもレベルが一切上がらないと言われている。
「そう言われているのは、『無職』を『転職』させた場合じゃないのかなと思ったの。それもレベル1で経験値0の人だからじゃないのかなって」
フィリアの言葉に、俺の心に大きな電気のようなモノが流れた。
「え? で、でも……」
「ソラ、今の経験値が貯まってる感じ……する?」
フィリアの言葉通り、俺の中に経験値が貯まったような感覚があった。
ほんの少し、これがどれくらいで、レベルが上がるにはどれくらいかかるのか分からないけれど……たった1かも知れないけど、ちゃんと経験値が貯まった感覚があった。
「あ、ああ…………ほんの少しだけど……ちゃんと…………」
俺はまたもや涙を流した。
◇
あれからフィリア引率のアムダさんとイロラさんのレベルを上げては、転職させて俺の『転職士』のレベルを上げる事を目指した。
アムダさん達には本当に申し訳なかったのだけれど、今まで『無職』だったから狩りすら出来なかった。でも、今は狩りが出来ると言われた。
レベルは毎日1に戻るけれど、魔物の素材が獲得出来るのは今までの生活と比べて全然違うとの事だ。
本来『転職』するにも、大量の料金を取る人が殆どだ。たまにしか仕事がないので、一回の転職でその分を取り戻そうとしている転職士が殆どで、価格が高騰しているのだ。
……それに他人が羽ばたくのが、羨ましく思えるに違いない。
毎日経験値を上げて貰う生活も一か月が経った。
――――そして。
- 職能『転職士』のレベルが2に上がりました。-
- 新たにスキル『経験値アップ①』を獲得しました。-
- 新たにスキル『同職転職』を獲得しました。-
『経験値アップ①』
転職させた相手の獲得経験値を二倍にする。
スキル効果の付与は任意で選択可能。
『同職転職』
相手の職能をそのままにレベルを1に戻す。
経験値吸収率が通常転職より高い。(通常転職1/100、同職転職1/50)