確かに警察が捜索しているのは知っていた。
でも、なんでお母さんや一香さんが……
疑問に思っていると一香さんが私たちに見えるようにスマホの画面を掲げる。
「……GPS」
真理佳のスマホの。
迂闊だった。すぐに気づくべきだったし、スマホなんて最初の時点で捨てておくべきだった!
「葵、そこは危ないわ!戻ってきなさい!!」
「何よ!今更親みたいな顔して!!今まで私たちのこと散々無視してきたくせに」
無性に腹が立った。
「私たちのことなんて、もうどうでもいいんじゃなかったの!!」
いつも、私たちのことを見てくれなかったくせに。
「私。期待してた!私たちの仲を報告する時、もしかしたらお母さんだけは私たちのこと受け入れてくれるんじゃないかって。皆みたいじゃなくて。優しくしてくれるんじゃないかって……」
それだけでよかったのに。それだけで、私達は救われたのに。
「お母さんの……バカ……」
本当に認めてくれるだけでよかった。
見守ってくれるだけで……。
「……ごめんなさい」
思ってもいなかった言葉に思わず顔を上げた。
「あなた達とどう接すればいいのか分からなかったの……」
数年ぶりのまともな親子の会話。
「分からないから、あなた達を遠ざけてしまった……我が子がこんなことをするくらい追い込まれていることにも気づかず……」
やめて。もう、これ以上は。私たちの決心が揺らいでしまう。
「……ごめんなさい。それだけで許されるとは思ってない」
お母さんは私たちのことを蔑んでなんていなかった。
いつも、私は自分のことしか見てなかった。
「あなた達が報告してきてくれた時、嬉しかった!でも、どうすればいいかも分からなかった……」
真理佳がいつも私のために動いてくれていたことにも気づいてなかった。
「学校を休むって言ってきた時も心配した!けど、あなたに真理佳ちゃんがついているならそれでいいかと許容した……」
分かってた。でも、怖いから認めたくなかった。だから、『また』とか『今度』とか、そういう言葉に旅の中ずっと怯えていた。
この機会を逃してしまうんじゃないかって。
本当に死にたかったのは真理佳ではなく、私だった。
「葵が背負っているものの重さにお母さん、なにも気づいてやれなかった……本当にダメな親だわ……許して欲しい」
お母さんの顔がだいぶやつれていることに気づいた。
きっと心配してくれてたんだろうな。
「葵……」
真理佳がそっと、私の腕に抱きつく。
「……もう、どうすればいいのか、分からないの。もう止まれない……」
真理佳が言った、私たちの切実な心の叫び。
「もう1回。1からやり直しましょ」
「……一香さん」
「今からでも遅くないわ」
「……いいのかな?私たちはここに居ても…」
「……私はあなた達が成長していくのを見守っていきたいの。言ったでしょう。あなた達は大人に守られるべき"普通"の子供なの」
一香さんとお母さんに私たちは抱き寄せられる。
「ごめんなさい。2人とも。許してとは言わない……だけど、もう一度だけチャンスを私たちにくれないかしら……」
そう言ってくれたお母さんと一香さんの腕の中で私たちはいつまでも涙を流し続けてた。