漫画のアシスタントの鬼山と愛沢にも手伝ってもらい、準備をする。
材料の下準備はしてある。肉を自然解凍しておいたし、食材は切るだけだ。カレールーはいつも使っているものを使用した。隠し味の牛乳やりんごやバナナも忘れずに用意している。野菜はじゃがいも、にんじん、たまねぎ、という一般的なものを用意した。見切り品になる野菜や果物を中心に安く商店街の店から仕入れた。おかわりできるように少し多めに用意する。
実際に作ってみるとじゃがいもの皮むきに悪戦苦闘したり、土のにおいを感じたり、芽がでている場所を取りだしたり、ひとつひとつが経験となる。球の形をしているので皮を剥く際には手を切らないように要注意だ。主にピーラーを使うがそれでも刃物は危ないので、女子高生のみくにお願いした。
たまねぎが目に染みてギブアップする空は戦闘に敗れた戦士のようだ。料理は戦いなのかもしれない。じっくり見極めて調理をする。肉や野菜の火の通り方を見極め、煮る時間も気を休めずじっと鍋と食材と対面する私たちは立派な戦士だ。
最初は火の通りにくい肉とジャガイモを中心に炒め、その後他の食材を入れる。たまねぎがあめ色になったら、水を入れて中火で煮る。20分ほど煮るが、この間も気を抜けない。私たちはその間料理する食材と対面する。
時々かき混ぜながら味見をする。部屋全体に立ち込めるカレールーの香りは食欲をそそる。匂いだけでも食べたような錯覚に陥る。気を抜かずにじっと見つめながらカレールウを入れてことこと弱火で煮詰める。最終対決までやってきた。この時に、牛乳を少々入れる。ゆっくりかきまぜるととろみが出て、カレーに重圧感が生まれる。コクが出て来たような気がする。料理は戦いで、その食材は大切なパートナーでもある。大切に大切に扱う。
大人がサポートしながらみんなで作る。お皿や水やスプーンの準備はレオと小春がやってくれた。ごはん担当は緑屋だ。真っ白な大きな白いお皿にごはんをよそう。すると、湯気が立ち込めお米の香りが香しい。
白いご飯粒は一粒一粒真珠のように光っており、よく見ると宝石のように思えてくる。できたカレーをよそうのは咲だ。真珠のような米と戦いの成果である野菜を煮詰めたカレーが混じりあい最上級のカレーが夕食時にできる。
この地球で最もおいしいカレーを作ったと自負するくらいみんなが愛情を込めて作ったカレー。空腹は最高のスパイスだというけれど、実際戦いを終えた全員が残さずきれいに完食したことは言うまでもない。
エイトがにこやかに笑顔でいただきますとごちそうさまの音頭を取った。そして、食事中は子供たちの話に耳を傾ける。それはアシスタントのみんなも同じで、そばにいる子どもの話を真剣に聞いた。これは、子ども食堂の大きな特徴であり、使命だった。なにかしら生きていて辛いことや困ったことがあれば聞いてあげる。解決できそうなものは一緒に解決に導く。そういう場所であり存在でいたいとエイトは言っていた。普段の食堂ではできない行為でもある。来てくれた子供たちの心の中を見せてもらうことが対価なのかもしれない。
各々が悩みを抱えている。それは、受験へのプレッシャーだったり、人間関係だったり様々だ。本当に困った子供を見つける手段として対話は有効だと小春が教えてくれた。
ちらりと横を見るとみくはエイトの隣で談笑していた。思い出話に花を咲かせているのだろうか。最近はあまり会ってはいなかったみたいだから、これをきっかけに仲良くなりたいのだろう。エイトは誰にでも優しい。そして、平等に愛を注ぐ。胸がきゅんと痛くなる。裁縫の時に指に間違えて針を刺してしまった時のような不意打ちの痛みが重くのしかかる。なぜだろう。もし、この心の痛みの意味がわかったとしても自分がどうにかできることでもない。だから、あえてナナは感じた痛みについて触れないようにしていた。
「ナナ、どうした?」
エイトが声をかける。
「別に何でもないよ」
エイトはナナの表情をよく見ている。
「今日夜、大事な話をしたいんだけれどいいか?」
真面目な表情でエイトが声をかけて来た。
みくは少しばかり複雑な表情を隠しきれない様子だ。やっぱりエイトを独占したいのだろう。なんだか罪悪感すら感じてしまう。エイトはいつもナナのことを気にかけてくれる。保護者であるから当然だけれど、世界中でエイトにしか現状は頼れないというのが未成年であるナナだったりする。だから、とても心強いし、支えられていると感じていた。家族愛というものだろう。これを手放したくない。思った以上にエイトに対する信頼と愛情が深くなっていることに気づく。
「ずっと7《ナナ》の隣は|8でいてほしいって思うよ」
「家族として、これからもそばにいてほしい」
エイトとナナの誓いの約束がここで結ばれた。それが、恋や愛かって? 長い人生、先のことなんてわからない。人の気持ちは変わるものなのだから。愛ならば家族愛なのかもしれないし、もしかしたらもっと別な好きな気持ちが隠れているのかもしれない。でも、今はただ隣にいるだけで幸せだ。
材料の下準備はしてある。肉を自然解凍しておいたし、食材は切るだけだ。カレールーはいつも使っているものを使用した。隠し味の牛乳やりんごやバナナも忘れずに用意している。野菜はじゃがいも、にんじん、たまねぎ、という一般的なものを用意した。見切り品になる野菜や果物を中心に安く商店街の店から仕入れた。おかわりできるように少し多めに用意する。
実際に作ってみるとじゃがいもの皮むきに悪戦苦闘したり、土のにおいを感じたり、芽がでている場所を取りだしたり、ひとつひとつが経験となる。球の形をしているので皮を剥く際には手を切らないように要注意だ。主にピーラーを使うがそれでも刃物は危ないので、女子高生のみくにお願いした。
たまねぎが目に染みてギブアップする空は戦闘に敗れた戦士のようだ。料理は戦いなのかもしれない。じっくり見極めて調理をする。肉や野菜の火の通り方を見極め、煮る時間も気を休めずじっと鍋と食材と対面する私たちは立派な戦士だ。
最初は火の通りにくい肉とジャガイモを中心に炒め、その後他の食材を入れる。たまねぎがあめ色になったら、水を入れて中火で煮る。20分ほど煮るが、この間も気を抜けない。私たちはその間料理する食材と対面する。
時々かき混ぜながら味見をする。部屋全体に立ち込めるカレールーの香りは食欲をそそる。匂いだけでも食べたような錯覚に陥る。気を抜かずにじっと見つめながらカレールウを入れてことこと弱火で煮詰める。最終対決までやってきた。この時に、牛乳を少々入れる。ゆっくりかきまぜるととろみが出て、カレーに重圧感が生まれる。コクが出て来たような気がする。料理は戦いで、その食材は大切なパートナーでもある。大切に大切に扱う。
大人がサポートしながらみんなで作る。お皿や水やスプーンの準備はレオと小春がやってくれた。ごはん担当は緑屋だ。真っ白な大きな白いお皿にごはんをよそう。すると、湯気が立ち込めお米の香りが香しい。
白いご飯粒は一粒一粒真珠のように光っており、よく見ると宝石のように思えてくる。できたカレーをよそうのは咲だ。真珠のような米と戦いの成果である野菜を煮詰めたカレーが混じりあい最上級のカレーが夕食時にできる。
この地球で最もおいしいカレーを作ったと自負するくらいみんなが愛情を込めて作ったカレー。空腹は最高のスパイスだというけれど、実際戦いを終えた全員が残さずきれいに完食したことは言うまでもない。
エイトがにこやかに笑顔でいただきますとごちそうさまの音頭を取った。そして、食事中は子供たちの話に耳を傾ける。それはアシスタントのみんなも同じで、そばにいる子どもの話を真剣に聞いた。これは、子ども食堂の大きな特徴であり、使命だった。なにかしら生きていて辛いことや困ったことがあれば聞いてあげる。解決できそうなものは一緒に解決に導く。そういう場所であり存在でいたいとエイトは言っていた。普段の食堂ではできない行為でもある。来てくれた子供たちの心の中を見せてもらうことが対価なのかもしれない。
各々が悩みを抱えている。それは、受験へのプレッシャーだったり、人間関係だったり様々だ。本当に困った子供を見つける手段として対話は有効だと小春が教えてくれた。
ちらりと横を見るとみくはエイトの隣で談笑していた。思い出話に花を咲かせているのだろうか。最近はあまり会ってはいなかったみたいだから、これをきっかけに仲良くなりたいのだろう。エイトは誰にでも優しい。そして、平等に愛を注ぐ。胸がきゅんと痛くなる。裁縫の時に指に間違えて針を刺してしまった時のような不意打ちの痛みが重くのしかかる。なぜだろう。もし、この心の痛みの意味がわかったとしても自分がどうにかできることでもない。だから、あえてナナは感じた痛みについて触れないようにしていた。
「ナナ、どうした?」
エイトが声をかける。
「別に何でもないよ」
エイトはナナの表情をよく見ている。
「今日夜、大事な話をしたいんだけれどいいか?」
真面目な表情でエイトが声をかけて来た。
みくは少しばかり複雑な表情を隠しきれない様子だ。やっぱりエイトを独占したいのだろう。なんだか罪悪感すら感じてしまう。エイトはいつもナナのことを気にかけてくれる。保護者であるから当然だけれど、世界中でエイトにしか現状は頼れないというのが未成年であるナナだったりする。だから、とても心強いし、支えられていると感じていた。家族愛というものだろう。これを手放したくない。思った以上にエイトに対する信頼と愛情が深くなっていることに気づく。
「ずっと7《ナナ》の隣は|8でいてほしいって思うよ」
「家族として、これからもそばにいてほしい」
エイトとナナの誓いの約束がここで結ばれた。それが、恋や愛かって? 長い人生、先のことなんてわからない。人の気持ちは変わるものなのだから。愛ならば家族愛なのかもしれないし、もしかしたらもっと別な好きな気持ちが隠れているのかもしれない。でも、今はただ隣にいるだけで幸せだ。