少し落ち着いたら先ほどの光景がまた思い浮かんできました。


『ラルス様、好きです』
『ユーリア』


 どこからどうみてもお似合いのお二人で、素敵だなと……おも……おもいまし……。

「──っ……」

 ふとポタポタと雨の雫に混じって、私の涙が流れているのに気づきました。
 修道院での生活でも泣いたことがなかったのに。
 苦しくて、苦しくて、胸が痛くて、もうどうしようもなくて……。

 お兄さまが好きで、でもお兄さまには恋人がいらっしゃって。
 それはとても喜ばしいことなのに、でもやっぱり苦しくて声にならない声で私は大泣きをします。
 嗚咽にもならない息の乱れがこの礼拝堂に虚しく響いて消えていきました。



「ローゼッ!!!」
「──っ!!」

 私を呼ぶ声がして礼拝堂の入り口のほうを振り返ると、そこには私と同じように雨でびしょ濡れのお兄さまがいて。
 ものすごい勢いで私に駆け寄ってき……っ!!

「ローゼッ! よかった……」

 勢いよく私はお兄さまに抱きしめられて、心臓がまたドクンと飛び跳ねます。
 お兄さま……ここまでもしかして走ってきてくださったのですか?