口を開けてつい話そうとしても、声がでずに私はなんとか意思を伝えようと、俯きながら首を左右に振りました。

「手が痛むかい?」

 ラルス様はそうおっしゃいますが、違うと言葉で伝えることができず、私はまた首をふります。
 私の思いをくみ取ろうとじっと私を見つめてくださるラルス様。
 そのサファイアブルーの瞳は今までに見たことがないほど澄んでいて、私には神様のように見えました。
 思わず見つめられて胸がきゅっとし、少し顔を赤くしてしまったように思います。

「身体が痛いわけではないんだね?」
「(ふんふん)」

 私は何度もこくこくと頷いてその通りだと伝えます。
 すると、ラルス様は口元に手をあてて考えたあとに、私に寂しそうな声で聞いてきました。

「もしかして、文字が書けないのかい?」

 私はゆっくりと申し訳なさそうに頷きました。
 怒られてしまうのではないか。
 そう思った私でしたが、ラルス様は私にずいっと身体を近づけると、優しく頭をなでてくださいました。

「そうか、大丈夫だよ。謝らないでほしい、君が悪いわけじゃない。君を怒ったりしないよ」