私は突然のお兄さまの声に驚き、ドアを押し開けてしまいました。
 当然私の姿は丸見えとなり、顔を上げたお兄さまに見つかってしまいました。
 いえ、もう声をかけてくださったということはすでにバレていたのでしょうね。
 私は観念したように少し申し訳なさそうに小さく縮こまりながら入りました。

「もっとこっちにおいで」
「(ふんふん)」

 誘導されるままに私はお兄さまの近くに行くと、お兄さまはニコリと笑って「どうしたの?」と聞いてくださいます。
 なんでもないというように首を横に振る私ですが、お兄さまは何かを察したようです。

「最近読み書きを教えにいけていなかったからね、ごめんね」
「(そうじゃないんです!)」

 お兄さまを責めたくて来たわけじゃないのですが、どうしましょう。
 一生懸命に首を振るもので、お兄さまは「わかった、わかった」といった感じで私を止めます。
 すると、お兄さまの近くにあった本を取って私に渡してくださいました。

「これ、絵本なんだけど、読めるかな? 難しいお話ではないからソファに座って読んでごらん」
「(ふんふんっ!)」