また鼓動がドクドクとしてきて怖くなってきたときに、お兄さまがそっと優しく囁きました。

「大丈夫、私を信じて」

 震える私の手をしっかり握ってくださり、皆さんに向かうように立ちます。
 すると、お父さまが会場にいる皆さんに声をかけて私を紹介しました。

「皆様、本日はお集まりいただきありがとうございます。早速ではありますが、今日は皆様にご報告と紹介がございます。ここにいるローゼマリーを正式に我がヴィルフェルト公爵家の娘として迎え入れます。皆様、どうぞこれよりよろしくお願いいたします」

 お父さまの紹介に合わせて私はドレスの裾を持ってちょんとお辞儀をします。
 それに合わせて会場からは拍手が沸き上がりました。

「ローゼマリー様、素敵なお召し物ですわね」
「(ありがとうございます)」

「髪飾りも素敵ですわ!」
「(クリスタさんにつけていただいたんです)」

 私はご挨拶とお礼を言えないかわりにお辞儀をしてお返事をします。
 皆さんあたたかくて優しい方々ばっかりです。

「ふん、ごますり令嬢たちが生意気な」
「声が出ないそうよ、可哀そうね~」