う~ん、これはここで……このカードはこれですね!

「惜しいですね! 最後の文字はこれです」
「(ふんふん)」

 ランチが終わった後、いつものように文字の読み書き練習をしていたのですが、また間違えてしまいました。
 クリスタさんは「大丈夫ですよ」と優しい声で慰めてくださいます。
 私は正しい文字のカードを机に置きなおして、口を広げて形だけ言葉を言ってみます。毎回この瞬間に、今日は声が出るんじゃないか、なんて思うんですが、出ません。

 ラルスさまがお仕事で忙しい時や私だけで練習するときは、クリスタさんがついて見てくれます。
 あれ、そういえば今日はラルスさま遅いですね。今日もやはりお仕事が忙しいのでしょうか。

 そう思っていた時に、ノックの音と共にラルスさまが入ってきました。

「ごめん、遅くなったね」

 私は首を振って大丈夫なことを伝えますが、よく見たらラルスさまは少し髪が乱れています。
 きっと急いできてくださったのでしょう。そのお気持ちがとても私にはとても贅沢な気がして、嬉しいです。

「仕事が長引いてね、ごめんね」