そんな練習をしている途中で、いきなりドアのほうから声がしました。
「熱心に練習して偉いね、ローゼマリー」
「(ラルスさまっ!)」
私は慌てて姿勢を正してお辞儀をして挨拶をします。
でもふと、エリー先生への言葉が思い浮かびました。
『カーテシーは貴族の女性の挨拶よ』
『相手に敬意を届ける気持ちを忘れないこと』
そうです、ラルスさまにきちんと私はご挨拶をしたことがなかったのではないでしょうか。
私はその場に立って少し考えました。
「ローゼマリー?」
どうしたのか、というように私を心配するラルスさまのほうを向いて私は練習したカーテシーを披露してみました。
「(ラルスさま、いつもありがとうございます)」
「──っ!」
私は精いっぱいの感謝の気持ちをこめてドレスの裾を持ちながらちょんとお辞儀をしてみました。
そんな私の挨拶に目を点のようになさってじっとされています。
はあ、やはりお気持ちは伝わらなかったようです。
ごめんなさいという気持ちをこめてもう一度いつもするように頭を下げてお辞儀をしました。