身なりがかなりよさそうな方なので、このお家のご主人さまでしょうか。

「よかった、目が覚めたんだね。私はフリード・ヴィルヘルト。ここは私の家だから安心して休むといい」

 そのお名前を聞き、私ははっとしました。
 フリード・ヴィルヘルト公爵さま──この地方の領主さまという偉い方です。
 もちろん実際に会ったことはございませんが、修道院にいた私でも名前くらいは知っています。
 ということはこの隣にいるお若い方は、ご子息でしょうか。

「私はラルス。何かあれば遠慮なく私にいって構わないからね」

 こうしてみると、かなりお二人は似ていて綺麗なサファイアブルーの瞳がそっくりです。
 ラルスさまは20歳くらいでしょうか? 大人びているのでもう少し上かもしれませんね。

「父上、医師の診断では幸い外傷はほとんど見当たらず、軽いやけどだけだと」
「そうか、よかった」

 公爵さまは優しく微笑むと、私に話しかけてきました。

「君がいた修道院は火事でなくなったんだ。シスターは行方不明で修道院の立て直し時期も決まっていない。だから、勝手なことをして申し訳ないが身寄りのない君を引き取らせてもらった」