「──っ!」
「きゃっ!」

 私は何かにぶつかってしまったようで頭をなでなでします。

「まあ、申し訳ございません! 私の不注意でっ! お怪我はございませんか?」
「(こくこく)」

 私は目の前のメイドさんに慌てて頷いて答えます。
 そうするとメイドさんは安心したように胸に手をあてて、はあ~と息を吐きました。

「もう起きていらっしゃったのですね。どうかなさいましたか?」

 言葉で思わず答えようとしますが、もちろん声は出ません。
 ごめんなさいの意味もこめて何度かお辞儀をしたあと、ほうきを探しているということを伝えたくて、ほうきを掃く様子をやってみます。

「ん?」

 何度かほうきの形を手で作って、そのあと掃く動作をしてみるのですがやはり伝わりません。
 では、これはどうでしょうか。

「お嬢様っ! 何をなさっているのですか?!」

 私は雑巾がけを示したくて部屋の床を手でずしゃーっと拭く動きをしてみます。
 部屋中を走り回る私をメイドさんは慌てて止めて、私の手についた埃を払ってくださいます。

「お嬢様、そんな汚いことダメです! 綺麗な手が汚れてしまいます!」