私は何度か自分の名前とラルスさまの名前を書いて綺麗にかけるように頑張りました。
 そうして少しずつ言葉を書けるようになっていったのです──



◇◆◇



 ある日の午後。
 他の言葉もいくつか練習して書けるようになったことをラルスさまにお伝えしたいと思いますが、やはりいきなり行っても迷惑でしょうか。
 公爵さまのお仕事の手伝いをなさっているようで、毎日お忙しそうにしていらっしゃいます。
 そんな中でいつも読み書きを教えていただけるのは本当にありがたいことです……。

 そう思いながら廊下を歩いていて、気づけばそこはラルスさまのお部屋の前。
 ノックをしようかと手をあげては下ろし、あげては下ろしの繰り返しです。

「────修道院の──スターの行方──つかったのか?」

 ん?
 中からラルスさまのお声が聞こえてきます。
 どなたかとお話されているので、お仕事中でしょうか。

「やはり支援金は全て横領していたようです。子供たちもかなりひどい環境下で生活をしていたかと」
「わかった、引き続き調査にあたってほしい」
「かしこまりました」