そんな彼女との婚約が決まった時は私自身嬉しくて仕方なかった。
 どんな趣味があるのだろうか、どんなものが好きなのだろうか。
 多くのことを聞きたくて仕方なかった。

 そして、ついに婚約の儀の当日。
 彼女には他に好きな人がいることを知った。

「お兄さまっ!!!! 大好きでした!!!」

 なんて素直でまっすぐでそして思いが強いのだろうか。
 義理の兄と妹。
 そんな絆の間に入れるわけがない。

「ローゼマリー・ヴィルフェルト。私は貴殿との婚約を解消する」
「なっ! オリヴィエ王子!」
「だが、貿易業での協定は予定通り結ばせてもらう。このオリヴィエ・ブランジェの名において、我が父に進言しよう」
「なんと、ありがとうございます」

 そうだ、私にできることは少しでも彼女が幸せになるようにと取り計らうだけ。
 そう、そこに私の想いなど必要ない。

 私の恋心は、誰にも言わずにそっと胸にしまっておこう──