バルコニーは冷えるけど、それでもラルス様とお話できて幸せを感じた。

「あなたの妹さん、ローゼマリーといったかしら? ずいぶん可愛い見た目ね」
「ああ、自慢の妹だよ」
「好きなの?」

 嘘ばっかり。
 あの子のことが大事で仕方ないくせに。
 私にはあんな笑顔もあんな優しい視線も向けてくれたことない。

 いつだって私の一方通行。


「ごめんっ!」

 その言葉を言って彼女を追いかけていったラルス様。

「よかったですか、お嬢様」
「ええ、清々したわ。これでもう思い残すことはないもの」
「お嬢様は嘘が下手ですね」

 そうね、私は嘘が下手なのよ。
 感情を抑えきれない……。

「ねえ、ヴィム。少し胸を貸してくれる?」
「はい、もちろんでございます」

 私は執事であるヴィムの胸の中で子供のように泣いた。
 いつかこの苦しみから解き放たれることを祈って──