「(ええ、ぜひ)」

 少し控えめに頷くと、お兄さまは「じゃあ、ゆっくり休むんだよ」と頭を撫でてご自分のお部屋に戻られました。


 私はホットミルクを入れて部屋に入ると、もう一度よく考えます。
 お兄さまのこと、大好きで、でも私はこの家のお役に立ちたい。
 私を拾ってくださったこの家に恩返しがしたいです。

『ローゼはヴィルフェルト家になくてはならない存在だよ。だから、あまり気負わないでほしい。ローゼの努力家なところと素直なところは私やみんなわかっているから』

 今日言われたお兄さまの言葉がこだまします。
 そんな風に言ってくださる、これ以上の幸せはないと思います。
 私は何度か目を閉じて考えを巡らせると、一つの決断にたどり着きました。

 そう、私はもうヴィルフェルト家が長女、ローゼマリーです。
 何を迷うことがありますか。
 何をためらうことがありますか。

 お兄さまへの想いはいつか断ち切らなければならないこと。
 だから……。

 ふとお兄さまの優しい笑顔と温かさが思い出されます。
 そう、この想いは断ち切らなければならない。
 だから……。



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