自分の部屋のベッドに横になりながら、深く息を吐いてお父さまに言われたことを考えます。

『大丈夫かい、ご令嬢』

 黄金色の綺麗な髪を靡かせて、アメジスト色の透き通った目で私を見るオリヴィエ王子。
 私を暴漢から身を挺して守ってくださった強いお方──

 いつかお兄さまに婚約者ができるまで傍にいたいと考えていたのに、まさか自分のほうに先に婚約話が来るなんて。

『大丈夫、私はローゼの傍から決して離れないから。何があっても必ず』

 あの日礼拝堂で言ってくださった言葉が思い浮かぶ。
 お兄さまはこのこと知っていらっしゃるんでしょうか。


 そんなことを考えながらなかなか眠れず、ホットミルクを入れに廊下に出ると、ばったりとお兄さまに出会った。

「ローゼ」
「(お兄さま……)」
「こんな遅くまでどうしたんだい?」
「(ホットミルクを入れに)」

 私は紙で書いてお兄さまに見せます。

「そうか、眠れないんだね。そうだ、明後日新しいドレスを見に行くのはどうかな? 前のドレスもいいけど、最近は社交界への参加も増えてきたし」

 お兄さま、私の婚約の事まだ聞いていないのですね。