「ローゼはヴィルフェルト家になくてはならない存在だよ。だから、あまり気負わないでほしい。ローゼの努力家なところと素直なところは私やみんなわかっているから」
「(こく)」

 私はその時頷きましたが、じゃあお兄さまにとって私ってなんなの?

 そんな質問はとても聞けませんでした。



◇◆◇



 家に戻ると、クリスタさんが私のところにいらっしゃってお父さまが呼んでいると伝えてくださいました。
 私は急いでお父さまのところに向かいます。

 お父さまに呼ばれるのもしばらくぶりだったような気がしますね。
 執務室に呼ぶということは何か内緒のお話や重要なお話でしょうか。

 ノックをしたあと、そっとお部屋に入ると中にはとても神妙な面持ちのお父さまがいました。

「こっちへ来てくれるか?」
「(こく)」

 私は机に向かうお父さまの近くに歩いていきました。
 お父さまの真正面に立つと、お話は始まりました。

「隣国の第二王子であるオリヴィエ王子は覚えているな?」
「(はい、もちろんです)」

 もしかして先日王子にご迷惑をおかけしたことで、何か処分などを受けることになったのでは……。