「ほら、口開けないとあげないよ?」
「(ぐううー)」

 お兄さまは結構意地悪だったのですね……。
 私は意を決して思わず目をつぶりながら口をあけて、あ~んをしてもらいました。
 すると口の中にふんわりとした生地と中からカットされたベリーの甘酸っぱさが広がって、思わず口もとに手を当ててしまいます。
 美味しいっ!!

「やっぱりここのケーキはどれも美味しいね」
「(ふんふん)」

 紅茶をゆっくりとそのあと飲みながらお兄さまは私にお茶会のことについて聞かれました。

「私のことをバカにされて怒ってくれたんだって?」
「(……こく)」

 でも、本当によかったことなのか、あれはヴィルフェルト公爵家の名を汚す行為ではなかったのかとお兄さまに紙で聞きました。

「私がローゼの立場でも同じことをしたよ。そのくらいローゼが家族を大事に思ってくれていて私も父上も嬉しい。大丈夫だよ、何も悪いことはしていない」

 「家族を大事に」ということが私に重くのしかかりました。
 やはり、お兄さまは私のことを家族として、妹として見ていない。
 わかっていたのに、なんだか現実を突きつけられたようで悲しい。