二人が巡り会う瞬間は思ったよりも早く訪れた。
 大学生の日和先輩とは何回もお茶をした。彼は薄茶色の髪にパーマをかけていて、オシャレな丈の長いコートが良く似合っていた。顔も高校時代に比べて小さく見えるのは、伸びた身長のせいだろうか。年々魅力が増していく風体に少しの危機感と多くの優越感が私の中を循環していた。

 二人で吹奏楽部が舞台の恋愛映画を見に行ったこともあった。思ったより吹奏楽要素がなくて、終わった後にファミレスで笑い合ったのもいい思い出だ。実は映画にあやかって帰りに告白しようかな、なんて密かに思っていたことは今はもう言えない。

 受験期には勉強を教えてくれた。私の苦手な数学の問題をスラスラと解く姿は一層格好良く見えた。同じ大学に進むことは叶わなかったけれど、大学受験が終わった時にはちょっと高いレストランに連れて行ってくれた。合格祝いとして私の為だけに奏でてくれた演奏動画をプレゼントされた時は涙が止まらなかった。世界を温かな空気で一杯にするメロディーと髪の毛にそっと触れる仕草はずっと健在で、それが何よりも嬉しかった。