学生時代は月日が流れるのが早い。よく耳にする言葉だ。前は大人に憧れていたから早く時間なんて過ぎてしまえと思っていたが、今は時すら止まって欲しいと思う。
今日は、日和先輩の卒業式。二年という期間が私には一瞬に感じた。仮入部での出来事が、あの日の音が今でも鮮明に思い出せる。
いくら止まれと願ってもはそれは止まることはない。今私の頬に流れ続ける涙のように。二年前、汗で染みを作った袖口に今度は涙が滲む。泣きじゃくる私の頭が優しく撫でられる。泣くなよ、なんて言いながら笑うこの人は明日にはもういない。
考えれば考えるほど、顔が濡れていく。今の私は相当不細工だと思う。
一方で彼は心底楽しそうに、俺がいなくなるのが寂しいのか?とからかってきた。図星なことを悟られたくなくて、一緒にトロンボーンを吹けなくなるのが嫌なんです!と言っておいた。あまり意味は違わない気がするけれど。
ふと頭に協奏曲が流れる。全てを包み込むような暖かさは変わらないはずなのに、今日は抱きしめられる感覚がなかった。あっさりと離れていってしまうようだった。まるで今の先輩のように。こんなに寂し気な旋律だっただろうか。
後ろで組んだ指を小さく絡める。私の返事を聞いて、彼はそっかと笑った。眩しい笑顔と優しく髪に触れる仕草は、二年前と何一つ変わっていなかった。


