「澄美さん。俺言いましたよね。確か。心が壊れるよって忠告したはずです。なんでこうなってるんですか」
「ごめんなさい。でも、99点なんて取らないように勉強して、ミスなく生きれるようにこれでも、自分なりに頑張ったはず。なんか間違ってたのかなぁ。タクト君はどう思う?君に投げかけたところで、どうにもできないかもだけど」

 私がこういうと、少し間をあけて返ってきた。

「いいっすよ。でも、長くなります」

 彼はそういうと、ゆっくりと話し始めた。

「俺は、昔から完璧を目指してた。でも、どれだけ自分が頑張っても誰も振り向いてくれない。誰も俺を見ないし、話さない。もちろん親ともうまく話せないし、話しても無視されて。どれだけテストでいい点を取っても、どれだけいい成績をとっても、難易度が高い運動をしても何にも、見てくれなかった。最終的に俺は、おとなしくて感情をあまり持たない人になった。そしたら、人生楽しくなくなった。友達なんて一人しかいないし、恋人の一人もいない。何をしても味がしない、何を見ても感動しない、何を聞いても雑音にしか聞こえない。だから俺は、高校も大学も行かず、とりあえず唯一の知り合いの動画編集を少し手伝って生計立ててます。そんな俺でも、澄美さんを見た時だけ、心が動かされた。『あ、この人、このままだったら俺と同じことになる』、そう直感的に思った。だから忠告しようと思った。でも、うまく誘導できなかった。その結果、こうなった。俺は、主観的じゃなくて客観的に見たことしかいてないから何とも言えないけど、澄美さんは多分間違ってない。でも、俺は間違ってると思う。なんでだと思う?」

 いきなり問われた。少し考えて、答えた。

「頑張る方法が間違ってた。それしか思い浮かばない」
「うん。それも一つの考えでいいと思う。でも、俺はそうじゃないと思う。方法じゃなくて、頑張るところを間違えたと思う」
「?」
「いきなりこんなこと言われても混乱すると思うけど、俺は、”親に見てもらいたい”じゃなくて、”自分が楽しい”ことをほどほどに楽しむのが澄美さんに向いていた、と思う。」
「そっか」

 私はそう返事をして、考えた。

(私はいつから何を間違えたんだろう。私の過去の詳細を知らない彼は、何を聞いても多分答えなんて知らない。これは私が考えるべきこと。それなのに、どうしてかな。彼が私のすべてを知っていて、見透かしているように感じるのは。結局、人に頼ることばかりが身について、自分で考えるのが苦手になったのは、自分で完璧を目指すようになってからだ。まさか、出会って間もない男の子に気づかされるなんてね)

 そんなことをぼんやり考えていたら、彼が話しかけてきた。

「澄美さん、考えはまとまりましたか。俺は、エスパーじゃないし、出会って間もないただの人だけど、何となく、澄美さんがいい方向へ行くと信じています。それだけは忘れないでください」
「うん。ありがとう。また、何かあったら相談してもいいかな。もちろん、タクト君も何かあったら私を頼っていいよ」
「そうしたいけど、、、できるかわからない」
「えっ!なんで?」