気がづいたら、どこかわからない、知らない土地に来ていた。息が切れて苦しい。どれだけ走ったかわからない。近くに公園があった。小さな小さな高架橋の下にある公園だ。ほとんど遊具がないが、ブランコがあった。ふらりとブランコの方へ吸い込まれ、気が付くと、2つの座る部分のうち、1つに腰かけていた。
ほとんど記憶がないけど、ひたすらに泣き続けた。ほとんど記憶がないけど、ひたすらに謝り続けた。誰に?もはやわからない。自己満足の世界だ。自分がどこに行くか、どこに行きたいか。何をしたいか、何をしたくないか。全く分からない。
でも、今日だけは涙を『汚い』という人がいないから、泣いていいような気がして、ずっと泣き続けた。
運よく、警察に補導されなかった。だれにも声をかけられず、気が付いたら朝陽が見えていた。さすがに帰らなければというときに、見慣れた人を見つけた。タクト君だ。思い出した。初めて会ったときに、日記を読まれて、しかも、一番触れられたくないところに触れられて。『何かを頑張るのはやめた方がいいのだろうか。こんなことを考える自分がバカバカしい。』この文に何かを付け加えるなら、たぶんこうする。
『でも、せめてまともな子に生まれたかった。そう、親に迷惑をかけないような完璧な子に。』
こんなことを考えながら、いつの間にかタクト君を追いかけていた。
(昨日から気が付いたら何かしていることしかないな)と思いながら、彼に話しかけた。
「タクト君」
「澄美さん?!どうしてここに、、、」
そういうなり彼は、私の格好と持ち物を見て、何かを察したようにうなずき、提案した。
「家、帰りにくいんですよね。話聞くし、服とか貸すんで俺のうち来ませんか」
「、、、行く。いい?」
「ふっ、ダメなら誘いませんよ」
そういって私は、彼の家にお邪魔した。入った玄関は、白基調で清潔感があり、広かった。きれいで、衛生的で、すごく魅力的ない家だと思うとともに、人が住んでいないような不気味さを兼ね備えていて、居心地が悪いような気がしてきた。そんな私をよそに、彼はリビングへ案内してくれた。しばらくするとほうじ茶が出てきて、その匂いが私を安心させた。