連絡先を交換した日から、私たちは毎日電話をした。と言っても、10分から15分くらいのもので、基本的に一日に起きたことを報告しあう。例えば、「今日は学校で〇〇さんが話しかけてくれた」「テストで100点が取れた」、そんなどうでもいいような内容。
でも、今までの日記にはなかったことが増えた。そう、人と話す機会ができた。自分一人でため込まないのは、発散することができて、自分で思ったより背負っていたものを、少し減らせたような気分だ。これで、彼の私の心が壊れるのではないかという心配は少し減ったと思う。
タクト君と連絡を取るようになってから2ヶ月ほどたったころ、事件は起きた。
テストで初めて99点をとってしまった。学年一位なのはキープ。しかし、点数を1点も落としてしまった。どうしよう。とりあえず、親には必ず聞かれるので答える。抑揚のない声で『99点だった』そういうと、母の顔は般若のようになっていった。
「なんで100点じゃないの!何のために勉強してたの!信じられない。本当に、私の子なの?有り得ない。しばらく顔も見せないで。こんなの私の子じゃない」
一瞬、何が起きているかわからなかった。別に、顔や体を殴られたわけでは無い。それなのに、体中が悲鳴を上げている。『痛い』『痛い』『痛い』。こんな声がずっと頭の中をめぐる。とにかく、その場から逃げ出したかった。財布も携帯も勉強道具も何も持たずに、家を飛び出した。靴を履いた記憶もない。
ひたすらに走り続けて、いつの間にか月が出ていた。それでもかまわず走り続ける。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。クズな子供でごめんなさい。100点取れなくてごめんなさい。当たり前のことができなくてごめんなさい。おかかさんの子供になってごめんなさい。応援してくれたのに裏切ってごめんなさい、、、、生まれてきてごめんなさい」
ひたすらに母へ謝罪した。どれだけ謝罪をしても、どれだけ反省しても、結果は結果なので、何も覆らないそれでも、気を取り直して勉強して、次のテストで100点が取れるように、A評価が取れるように。そう思いながら勉強する気になれなかった。