「タクト君、、?」
「人は肉体で死んで、火葬されても魂は残るといわれる。もちろん、その反対もある。肉体は残ったままなのに、心だけが死んでいって、完璧を目指す。極め付きは、何か一つのことが完璧じゃなかったとき、自分の価値の本当の終わりだと思って、何もできなくなる。家庭環境によっては、それで『使えない子』と判断されたら、殺される。あんたはその人生を歩むと思った。でも、俺を助けてくれるほど優しい心を持っているあんたが死ぬのは、俺が嫌だ。だから、また会いに来て、話して、自分を見つけてもらえればいいと思った」

 彼は、こう言うと、ハアハア息を切らしていた。私はとにかく驚くしかなかった。だって、完璧を目指さなければいけないと思って入て、実際に、テストはすべて満点、家事もマナーも運動もすべてできるようにして、そのできるのレベルは最高潮になるようにしている。なんだか、心を見透かされた気分がして気分が悪かった。でも、それと同時に、一人の人間として、タクト君に興味が出た。(この人と関われば、何かが変わるのかしら)。そう考えた私は、疲れている彼に話をした。

「タクト君、ありがとう。私のことを考えてくれて。でも、私は大丈夫よ。心は壊れていないし、完璧を目指してもいない」
「それ、嘘でしょ。だって、あんたがレモン水を作ってくれてる間、証拠探しに、テストという名がつくものの成績、本の種類、日記とか、個人情報で申し訳ないけど見させてもらった」
「さすがにそれはダメだよ」
「それはごめんなさい。でも、見て思った。テストという名がつくものは100点かA評価。何ならS評価だった。本の種類は、勉強に関するもの、マナーに関するもの、自己啓発本、特に自分と向き合う系が多かったな。そして最後に日記。これは、さっと見させてもらったけど、親に対する謝罪、学校に対する謝罪、人に対する謝罪。とにかく謝罪だけだった。そして一日だけ、自分の存在価値をすごく悪く言っていた。『何なら、死んでもいい』そんなあんたの声が聞こえてきそうだった。直接的に書いてなくても、『何かを頑張るのはやめた方がいいのだろうか。こんなことを考える自分がバカバカしい。』こんなことが書いてあったら、特に心が無くなっていくぞ。これでも、自分は大丈夫なんて言えるのか。もし言えるなら、俺が言えなくなるまで教えてやる。そして、少しでも前向きになれるようサポートしたい。そして、もし言えないなら、どうしたいか教えてくれ。頼む。もう、心が死んでいく人を見たくないんだ、、、」

 だめだ、この子にはすべてお見通しらしい。認めるしかない。

「そう、、。私はタクト君が言ったことを認める。だから、私が死なないでもいい方法を一緒に考えてくれない?」

 いたずらっぽく笑いながら言うと、彼は笑顔でうなずいてくれた。それがやはり、小さな行動の一つなのに、とてもうれしく感じた。この人は一体何者なんだろう。少し考えてみるも、やはり答えは見つからなかった。そして、連絡先の交換をし、その日は解散した。