その日私は、心労も重なり、自らタクト君と同じ世界に行こうとした。でも、何度も何度もシミュレーションして、万全の態勢で挑めるよう調べつくして、一番自分が可愛いと思う服で決行場所に向かった。その場所は、新幹線で2時間ほどかかる。私は行く途中に、寝てしまった。
その時の夢は、いつものようにタクト君が出てきた。彼は私に訴えかけた。はっきりと私に声が聞こえるように。
『こっちに来ちゃだめだ』
『あんたはここに来るべき人間じゃない』
こんな言葉を何回も繰り返した。何回も、何回も。でも、私は決めていた。どれだけ止められても譲りたくなかった。だって、自分の心の限界が今までで一番になったから。そんな私はふとあることが気になった。
タクト君は何者だったのか。
正直、夢の中でいつもいつも私を励ましてくれる彼は、なぜここまでしてくれるのか。その理由が知りたかった。そして、せっかくなら、彼が息絶える前に言っていたことを確かめてから死にたいと思った。
『タクト君、君は一体何者なの』
『俺?』
『うん。最後だし素直に答えて』
『いやだって言ったら?』
『筋違いかもしれないけど、貴方に真実を教えてくれなかったことを恨み、そっちの世界で貴方を殺すわ』
『、、、さすがに殺されたくないな。いいよ。教えてあげる』
彼はそういうと少し目を伏せ、話し始めた。