知らなかった。こんなにあっさりと人が死ぬなんて。でも、いくらなんでもおかしいと思う。これはタクト君を信じていないということになる。でも、どうしても、この現状を信じることは怖かった。今までの人生で一番。
とりあえず、彼が死んだあと、警察に電話した。もちろん、彼の死に際に居合わせたことは伏せて。それからは、何も感じない日々が続いた。警察に事情聴取されて、家に帰ると家を出たことに対して案の定怒られた。でも、ただただ息苦しくなるだけだった。私が心を開いて話せる人なんて、一人しかいなかった。でも、それは私の前からいなくなった。しかも、いきなり、意味の分からないことを残して。
ある日、警察から連絡があった。彼は、戸籍上存在しない人だったらしい。もちろん、病院で何かの余命宣告をされているわけでもないから、私の話した『昨日死ぬ予定だった』は迷宮入りした。そう思うしかなかった。でも、彼はどうしても嘘をつくような人間に思えない。あくまでも私がそう思うだけで、現実はそうではないのかもしれない。
彼がいなくなってから数か月後。私は奇妙な夢を見るようになった。その夢には必ず生前のタクト君がいる。でも、内容をあまり覚えていない。ただ、1つ確実なのは、彼は私にメッセージをくれている、生きていたころと同じように。
なぜ覚えていないのに言えるのか。それは、夢を見た日の朝、体が軽いからだ。タクト君がいなくなり、親ともいまだに喧嘩していて、正直体がいつも重い。ひどいときは、こんな体なら死んでしまいたいとも思う。でも、夢を見れば、少し前向きにとらえて、楽しそうに自分が一日を過ごすことを想像できる。
夢は、私にとって大きな意味をもたらした。でも、なぜそうなるのかがどれだけ考えても思いつかない。それが分かったのは、夢を見始めて半年後。