「はっ!?」

 不意に視界が開けた。窓から陽の光が差し込む。
 エリーナはベッドの上に寝かされていた。

「私……どうなったの?」

 身体の内側から込み上げる不快感は消えていた。意識も視界もはっきりしている。
 エリーナは周囲を見回す。あの監房ではない。見たことのない部屋だ。

 ベッドは窓際に配置され、部屋の中央には大きなテーブルが置かれていた。上には所狭しと、ガラス製のフラスコや試験管が並べられ、それを繋ぐように金属製の管が縦横無尽に這い回る。錬金術に用いる機材のようだ。

「え?」

 そこで初めて自分の身体の違和感に気づく。
 私はこんな華奢か身体だったか? こんな透き通った白い肌だったか? それに目の横にチラチラと見えている金髪。私の髪はこんな色じゃない。

「なに、この感じ?」

 そうつぶやく声も自分のものじゃない。背筋に冷や汗が流れる、なにかおかしい。エリーナは周囲を見回す。
 壁に、姿見が掛けられていた。エリーナはベッドから立ち上がり、それ駆け寄る。

 そして、愕然とした。

「……誰?」

 鏡の奥から、呆然とした表情でエリーナを見つめる顔は、全く知らない少女のものだった。