「まさか……」
二人の話を聞き終わった後、リアンはつぶやくように声を漏らした。
「信じなくてもいい。何しろ証拠らしいものもこれから集めるしかない。が、そういう前提で動く以外に活路はないであろう」
「確かに……そうかもしれませんが……」
リアンは大きくため息をつく。
「兄様……」
そんな次兄に声をかけたのはユーリアだ。
「私も、兄様が表に立つしかないと思います」
「ユーリア、私のそんな器があると思うか?」
「いえ、むしろ兄様にしかありえないかと……」
「私も、ユーリアの意見に同意です!」
そう言ったのはレスクードだ。
「今のアルディス兄上のお話通りなら、私やアロウスにも、あるいはその資格があるかもしれません。しかし……完璧にその役割を担える人物はリアン兄上うえ、あなただけです!」
続いてアロウスも言う。
「以前から私たちは言っているでしょう。リアン兄上は皇帝になるべき人物だと」
「お前たち……」
リアンは観念したように深くため息をついた。
「兄上、それにアンナ……あなた達はそうやっていつも私を利用してばかりだ。まったく、腹立たしいったらありゃしない」
言いながら、リアンは二人を見た。特に、アンナを見る眼差し、それはかつてエリーナを「義姉上」と呼び慕っていた時のそれだった。
もしかしたら気づいている? と、アンナは思った。様々なことをリアンには打ち明けているが、自分の正体だけは秘密にしたままだ。だが、マルムゼの正体がわかった今、その他様々な情報をつなぎ合わせ、アンナという名とエリーナというの名を線で結ぶ発想が出てきてもおかしくない。そういう聡明さを、この皇弟は持っているはずだった。
「……ふっ」
アンナとリアンの視線がぶつかった時、彼は少しだけ寂しそうな顔で微笑んだ。そして、すぐに全く別の顔になる。
「わかった、私がダ・フォーリス体制に対抗するための盟主となろう!」
彼がこれまでほとんど見せてこなかった為政者の顔つきだった。彼は、自らこれから起こる内乱の当事者となることを、その場にいた人々に宣言したのだ。
「まずは南部に向かう! 目指すは帝国第二の都市ビューゲル! そこを拠点とし、帝国全土に号令をかけるのだ!」
二人の話を聞き終わった後、リアンはつぶやくように声を漏らした。
「信じなくてもいい。何しろ証拠らしいものもこれから集めるしかない。が、そういう前提で動く以外に活路はないであろう」
「確かに……そうかもしれませんが……」
リアンは大きくため息をつく。
「兄様……」
そんな次兄に声をかけたのはユーリアだ。
「私も、兄様が表に立つしかないと思います」
「ユーリア、私のそんな器があると思うか?」
「いえ、むしろ兄様にしかありえないかと……」
「私も、ユーリアの意見に同意です!」
そう言ったのはレスクードだ。
「今のアルディス兄上のお話通りなら、私やアロウスにも、あるいはその資格があるかもしれません。しかし……完璧にその役割を担える人物はリアン兄上うえ、あなただけです!」
続いてアロウスも言う。
「以前から私たちは言っているでしょう。リアン兄上は皇帝になるべき人物だと」
「お前たち……」
リアンは観念したように深くため息をついた。
「兄上、それにアンナ……あなた達はそうやっていつも私を利用してばかりだ。まったく、腹立たしいったらありゃしない」
言いながら、リアンは二人を見た。特に、アンナを見る眼差し、それはかつてエリーナを「義姉上」と呼び慕っていた時のそれだった。
もしかしたら気づいている? と、アンナは思った。様々なことをリアンには打ち明けているが、自分の正体だけは秘密にしたままだ。だが、マルムゼの正体がわかった今、その他様々な情報をつなぎ合わせ、アンナという名とエリーナというの名を線で結ぶ発想が出てきてもおかしくない。そういう聡明さを、この皇弟は持っているはずだった。
「……ふっ」
アンナとリアンの視線がぶつかった時、彼は少しだけ寂しそうな顔で微笑んだ。そして、すぐに全く別の顔になる。
「わかった、私がダ・フォーリス体制に対抗するための盟主となろう!」
彼がこれまでほとんど見せてこなかった為政者の顔つきだった。彼は、自らこれから起こる内乱の当事者となることを、その場にいた人々に宣言したのだ。
「まずは南部に向かう! 目指すは帝国第二の都市ビューゲル! そこを拠点とし、帝国全土に号令をかけるのだ!」